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第94話 真乃斗
「ねぇ。どうしたら長く一緒にいられるかな」
きっと、哲至さんとはずっとそばにいられる。
なぜなら血が繋がっているからだ。
一緒に暮らしていなくてもこのヒトとは一生、そばにいられる。
けれどいま一番そばにいたい、一緒に暮らしてる高瀬さんとは、
互いの好きって気持ちがなくなってしまったらもう、一緒にはいられない。
オレたちは一生、気持ちが無くなってもそばに居られるなにかに、
縛ってもらうことが出来ないのだ。
「カズさんと長く一緒にいるんでしょ?秘訣は?」
するとオニイチャンは
「未来を考えないこと」
なんていう、かなり意外なこと、というか、思いつきもしなかったことを、
いつもの笑顔付きで言った。
「どういう意味?」
「未来もそばにいたいから、いまだけを見るってこと」
見えないモノを見ようとするんじゃなくて、
見えてるモノを見るようにするのだと言われて、
やっぱりよくわからない。
そうして、
目の前のオニイチャンはいま、きっと
ここにはいない恋人のことを考えているのだとわかる顔をする。
いましがた、
いまだけを見ると言ったはずではなかったかと思って
「いま一緒にいるのはオレだけど?」
きっとそう言う意味じゃないってことくらいわかりながら、
いまここにいない恋人を「見てる」オニイチャンにそう言えば
「だって話題に出すんだもん」
などと嬉しそうに言った。
未来ではなく、いまを見るってことの意味を考える。
目の前の、たった一人のオニイチャンを見つめながら。
幸せそうな顔。
それは、カズさんを想っているって顔。
このヒトのナカにはいつだって、四六時中、カズさんがいるって顔。
そしてそれは、高瀬さんがオレを想ってるときの顔と同じに見えた。
「全部はわかんないけど、そういう顔をしてたらいいのかな」
「ん?」
好きなヒトのことを
好きなヒトなのだとわかる顔をする哲至さんにふふっと笑って見つめれば、
おなじようにフフッと笑ってその瞬間、
ああ、オレはこのヒトと血が繋がっているのだと細胞でわかった。
「いま、幸せだなってことをちゃんと見つめられればいいってことかな」
だって、目の前の哲至さんはそういう顔をしてるから。
高瀬さんはいつだってそういう顔をしていたから。
すると、オニイチャンはそれには答えずに
「さっき、景ちゃんの出来すぎなとこがイヤだって言ったでしょ。
そういうの、わかっているならきっと大丈夫」
と言った。
「そういうのって?」
「好きな相手のイヤなところがわかっているなら、
きっと長くそばに居られるってこと」
「そうなの?」
「そうなの」
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