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第96話 真乃斗

出来すぎな高瀬さんが気になっちゃうのは、 高瀬さんがキライだからってことじゃない。 オレが勝手に自分と比較して、 自分がどこか劣っているダメなやつだって気がするからだ。 ただ、自分が卑屈になるから疎ましいってだけ。 つまりは自分が好きじゃないってだけ。 オレはいまだに突然、眠気に襲われる。 眠くなってしまうとどうにもならないのだ。 やらなきゃいけないすべてをストップして、 ソファの上で独り、高瀬さんが買ってくれた毛布にくるまって、 あっという間に海のソコへ堕ちていく。 つまりはなにも解決できていない。 なにも変わってはいないのだ。 けれど・・・ 「コーヒーを飲みすぎるし料理も出来ない」 「なに?」 「俺のダメなところ」 「そんなの、ダメなとこじゃなくて可愛いトコって感じ」 「でしょ?」 相変わらず繋がったままで、高瀬さんは笑う。 「もっとあるよ。わりと意固地だし変化は苦手な方だし、 なにより、、俺は男しか好きになれない」 覗き込む、高瀬さんの瞳はなんてきれい。 ドキリとして思わず繋がったソコがドクドクっとすれば、 ナカの高瀬さんもドクドクっとした。 「でもさ、だから真乃斗くんに会えた」 「・・・」 「つまりそういうこと」 つまりそういうこと・・・頭の中で、高瀬さんの台詞を繰り返す。 そうして、ああそうかと思う。 高瀬さんはオレを好きなのだ。 たとえオレがどんなだとしても。 それはオレが高瀬さんを好きなように。 つまりはそういうことなのだ。 「そろそろ動いていい?」 裸で こんな体勢で そんな場所で繋がりながら 見つめ合って笑う。 返事をする代わりにその紅い唇を塞いだ。 ーーー・・・ 「つけこんだんだよ」 少し汗がひきだした身体をうつ伏せにしたとたん、 高瀬さんは高瀬さんに似合わない言葉を高瀬さんらしく言うから、 ゆっくり顔をそちらに向けた。 「哲至を好きで、失恋したって言った真乃斗くんに。 真乃斗くんが辛い思いをしてると知っていて、俺はそこにつけこんだ」 視線が揺らぐ高瀬さんを見つめる。 高瀬さんがどこか後ろめたそうな顔をするのを、 オレは初めて見たかもしれない。 それはつい今しがた、 見せつけるようにして見せてたイヤらしい、 男らしい顔とはまったく別人すぎて、 だからこそ、そのギャップにドキドキする。 「それなら、オレはつけこまれてよかったね」 「え?」 「オレ、高瀬さんにつけこまれるスキがあって良かった」 それは心からそう思った。 目の前のこの男につけこまれたことは、きっとオレの運の良さだ。 オレは本当に、それを嬉しく思った。

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