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第2話
「っ……ふ」
酸欠になりそうなくらいのキスは思考力を根こそぎうばっていく。
頭は溶けてんじゃねーのって感じだし、身体も熱くなってきてて疼いてくる。
俺の腰に回ってる手も密着する身体も俺と同じ、いやもっと逞しい身体なのに。
なんでムラムラしてんだよ、俺!
そんなん気持ちいいからに決まってんじゃねーか!
って、なんかもうわけわかんねー。
コイツが男ってことをのぞけばこうやって流されてエッチーなんてよくはることで。
普段そんなだらしないことばっかりしてるからこういうとき自分でストップかけられなくって困る。
下半身にはどんどん熱が集まっていっていてキスは気持ちいいけどそれだけじゃ足りなくて松原の脚に腰を押し付けていた。
「ん、っ」
カリッ、と下唇を噛まれてじんわり痺れるような痛みに眉を寄せる。
「なにこんなに硬くしてるんだよ」
全然表情の変わらない、余裕っぽそうな松原は嘲笑うようにして俺を見る。
「……だって、しょうがねーじゃん」
睨んでみるけど絶対効力ないと思う。
顔も熱いし視界は目が潤んでるせいかちょっとぼやけてるし、あーもう情けねえ。
でも―――。
「……お前だって反応してんじゃねーかよ」
よくよく考えれば押し付けた下半身、俺の身体にも少しだけ硬くなりつつあるような感触が当たってる。
「だったら?」
「……」
怯みもしないどころか反応を主張するかのように松原も俺の身体に押し付けてきて、つい口を尖らせた。
ちくしょーコイツやっぱムカつくー!
思ってたよりも怖くはなさそうだし、こんなエロいなんて意外な一面だけど、だけど!!
コイツは絶対ドSだ。間違いない!
「お前のほうが反応してるけどな」
喉を鳴らしながら松原は俺のへとズボン越しに触れてきた。
指でなぞられて気持ちよさともの足りなさが沸き上がる。
戯れるようにしか動かない指に焦れてグッとさらに腰を押し付けて松原を見つめた。
コイツ男だけど……まぁなんとかなるだろう。
なんて安易な考えで―――
「なぁ……もう一回キスしようよ」
って、ねだった。
一瞬松原は目を眇めたけどすぐに顔を近づけて俺の口を塞いだ。
キスしてればコイツが男だとかどうでも―――よくはないんだけど、キスうまいからよくなってくる。
触ってほしいから俺から松原のをズボン越しに掴んで揉んでみた。
仕返しとばかりに俺のも握られて擦られる。
ダイレクトじゃないけど摩擦されて快感は増幅してくる。
口の端から飲み込みきれなかった唾液がこぼれるていくのを感じながらもキスを続けて、しばらくしたころ松原に押された。
キスしたまま移動するらしく後ろへと押される。
すぐに行き止まりになった。尻に横に当たる感触にデスクなんだろうってことがわかる。
唾液の糸を引かせながら口を離すと、松原が俺を抱きあげた。
「っうわ」
デスクの上に座らせられて至近距離で唇を舐められる。
「向井、お前さ」
余裕そうなのは変わってないけど眼差しは色気たっぷりな感じで、男だっていうのに変にドキドキしてくる。
「いつもそうやって女誘って食ってるのか?」
「……」
別に誘ってるつもりはねーけど、しょうがねーじゃん気持ちいいこと好きだし。
まだ10代だし! 男なんて猿だろ猿!!
ムッと口を尖らせると、また舐められた。
「別に説教なんてしないから安心しろ。ただ―――」
脚を開かされてその間に松原が入り込んでて、そんな状態で顎に手をそえられて上向かされる。
「いまお前が誘ったのは"俺"だってこと、忘れるなよ?」
目の前にいるんだからそんなんわかってるっつーの。
そう思ってたけど―――
「俺が"食われる"わけはないんだから、な?」
妙に甘く艶っぽくて欲を孕んだ声が囁いて、その手が俺のズボンのベルトに触れてきた。
バカな俺は松原の言った言葉の意味をよく理解なんてしてなくって―――なにも考えないまま俺も松原のベルトに手をかけた。
だけど俺が松原のベルトを外す前に松原が俺のを外し終わって前を寛げてしまう。
そんであっさりとズボンの中に手が潜り込んできて、
「……ッ、んっ」
掌に包まれてゆっくり上下された。
あー……やばい、まじで気持ちいい。
ようやく直接触ってもらえて快感が身体中を走る。
女の子とは違うゴツゴツした骨ばった手が俺の息子を扱いてるのが新鮮だ。
相手は男だっていうのに不快感もねーし……。
それってどうなんだって気もするけど……いまはいっか。
「んぅ」
ぐ、と鈴口を引っ掻かれて腰が浮く。もちろんその間もずっとキスは続いていて、俺の呻きにちょっと松原の顔が離れていった。
名残惜しくてつい視線で松原の唇を目で追う。
「お前、生意気なモン持ってるな」
「……へ? ん、イテっ」
ぎゅっと強く握りこまれて眉を寄せた。
「う、うらやましーだろ」
顔は女っぽいってよく言われる俺だけど、息子はわりとっていうか結構デカイほうだと思う。
ちょっとだけニヤって笑って松原を見ると鼻で笑われた。
「デカければいいってもじゃないんだよ、ガキ」
「テクニックだってあるからな」
「ふうん」
まぁ今日はそのテクニック使うことはないけどな―――、ってボソリと松原が呟いた。
「扱いててやるから脱げ。制服汚れるぞ」
「……え……全部?」
「前開けるだけでもいいけどな」
「……うん」
とりあえずブレザーは脱いでシャツのボタンを外していく。
視線を感じて少しだけ気恥ずかしいっつーか。
そういや俺、コイツと喋るのもほとんど今日が初めてなのになにしてんだろう。
俺のは握られたままシャツを肌蹴させると途端に影が落ちて首筋に吸いつかれた。
「ひゃっ」
変な声あげて恥ずかしさに唇を噛む。
ちらり俺を見上げた松原はまたすぐに俺の鎖骨やらにキスを落としていく。
「お……おいっ」
俺のを握ってる手は休むことなく動いている。
素肌に吸いつく唇の感触や俺のを扱かれる快感に先端からは先走りが溢れだして微かな水音が俺と松原しかいない準備室に響きだす。
「松原っ」
「なんだ」
一方的に俺が攻められてる感じなのに戸惑うっつーか。
いつもならこうして女の子に触れるのは俺だし。
「俺も触るっ」
「あとでな」
「はぁ? ―――っ、ん、おいっ」
びくっ、と身体が震えた。
肌を這う舌は俺の胸元を下りていって胸の先っぽを舐めたかと思うと口に含む。
「なんだ」
「胸ないから!」
「見ればわかる」
「じゃあ……っひゃ」
そんなとこ舐めないでいいって言いかけたら甘噛みされた。
情けない声がやっぱり出てしまって、顔が少し熱くなるのを感じた。
「気持ち悪いか?」
「そうじゃないけど」
「なら、そのうち良くなるだろ」
松原は薄く笑ってまた俺の真っ平らな胸に唇を寄せる。
「……っ、ぁ」
膨らみもない柔らかくもない胸弄ってなに楽しいんだろう、って思いながらも微妙な刺激がむず痒くて疼いて、松原の肩をぎゅっと掴んだ。
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