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5.伊藤 宗壱(宗壱✕理宇)

 膝枕だったら頭を置く部分に、おなかをうつ伏せに載せる。理宇のカラダは、当然全ては載りきれない。大型ワンコをお膝抱っこしてるみたいだ。つい、濡れた髪をわしゃわしゃ。  恨めしそうに見上げる視線を無視して、はみ出た腰にシャワーを当て固定する。形のいい二つの丘を割って、水流の中に慎ましく隠れる孔から、専用の洗浄液をぶちゅぶちゅと胎内に注ぐ。 「ん、ぅ……ゃ、ぁ……っ」  羞恥と、期待の声。  何度経験していても慣れないし、恥ずかしいのはわかる。でも、オレが洗いたい。  懸命に顔を逸して、緊張に強ばる理宇。  右中指にコンドームを被せて、ぷつりと先端を挿す。いつも繋ぐ左手で、キツく握りしめてる彼の拳をそっと包む。 「力、抜いて」 「ぁ、あんっ……ふぁ、んっ……んぁっ」  かき混ぜる淫靡な音は、シャワーにかき消されて聞こえない。理宇のくぐもった嬌声だけが、ただ響く。  液をかき出して、また注いで、を繰り返す。ゴムを替えて指を増やす。内襞を開くように全面を撫でこする。 「りう、また大きくなってる」  オレの方もガチガチだ。でも自分の快楽は、当面無視! 思いっきり理宇を可愛がりたい、ナカも前も蕩けさせたい、って欲求が勝つ。 「そーいち、はや……くぅ」  いったん指を抜いて、次は潤滑液を注ぐ。浴室に蒸れて広がるフルーティーな香り。これから性行為をするんだと言わんばかりの、淫らな甘さ。  浅い部分の勝手知ったるイイトコロだけを、二本の指で優しく執拗に押し続ける。 「ひ、ゃ、ぁあ……っ! あ、ぁあ……そ、いちぃ、ィく……イっちゃう……っ」  理宇は自分で腰を揺らし、オレの右腿に性器を擦りつけ、少しでも快感を得ようと躍起になっていく。無自覚で、可愛いがすぎる。  揺れる腹筋が、正座の間から勃ち上がるオレの雄を阻む。当たってこね回される刺激。オレもはーっはーっと息を大きく吐いて、もっていかれそうな射精感を逃す。 「そーい……挿れてぇ、も……そーいちそーいちぃ」  発情中の獣みたいに本能でオレを求める。恋する人がオレの名を呼んで、ねだる。たまらない多幸感。  だから、まだ。 「りう、もっと」  もっと、オレを欲しがって。  オレは理宇の全てが欲しい。  理宇がオレを求めてるって感じると、この強欲が許される気がするから。もっとオレに飢えて。  わかってる。  もし、小学生の時に出会わなかったら。もし、お互いの初恋が秘めたままで終わってたなら。  学者の家系で継ぐ必要がない理宇は、自由に何にでもなれた。その才能を活かして、誰とでも、自由に、どこにでも行けた。もしかしたら、未来に繋がる明るい家族だって、ね。  オレが、伊藤の家が、縛ってる。ごめん。  でも、理宇をぜんぶくれよ。  シャワーから弾けた水滴が、綺麗な背中をころころ滑る。右手の動きは緩めずに、舌で球を潰すみたいにチュッチュッとついばむ。無防備に目の前に晒されたうなじを、そっと喰む。  いっそ、理宇を喰らって一つになれたら幸せなのに、と心底思う。 「あぁっ……ぁうっ、んんっ……」  喘ぐ声を殺そうと下唇を噛むのが、嫌だ。理宇を傷つけるのが理宇でも、許さない。繋いだ左手を離して、唇を引き剥がすように親指を突っ込む。 「噛んでいいから」  左の親指で口を、右の三本でナカを。同じ動きでグチャグチャに犯し、追い上げていく。どろどろに熱く、うねり、吸いつく。痙攣。 「ク……ァア、そー……イ……クッ」  熱い精が、オレの右脚に広がる。嬉しい。  息も絶え絶えに、浴室の床にぐったりする理宇。二回吐精、だもんな。お疲れ。  カラダが楽なように、上肢をシャワーチェアにもたれ掛かけさせる。 「待っててね。オレも洗っちゃう」 「えええー……俺も、そーいちを洗いたい……」 「休憩してて。アレで終わり、じゃないでしょ?」  オレはまだだし。  見せつけるみたいに、親指の噛み跡をペロリと舐める。赤面して黙っちゃう理宇が可愛い。  超高速で自分を洗い上げる。あくまでも、使う手順は間違えないように。今日使ってるシャンプー類も全て、理華さんセレクトだ。  理華さんはいつも、オレをサロンに連れていく。うちのワードローブに次々買い足そうと、あちこちの店へ引っ張り回す。まあ服なら、サイズが同じ理宇と共用だからいいけど。  ミス学園を獲れるほどオレを着飾ってくれたのも、理華さん姉弟だ。豪奢な振り袖と化粧。頭や四肢を彩る生花。  ほんと、あの人には頭が上がらない。  正確に作業を終えて、お預けワンコを見下ろす。オレは自分の滾る性器に手を添えた。

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