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第9話
ところで俺的に問題なのが風呂だ。
少将にはおっぱいがある。
仕事柄女性の裸体を見慣れてはいる。相手が患者だと何の感情も持たずに淡々とこなせるのに、家柄が良くて本人も少将なんて大物で、おまけに絶世のいい男の胸にメロン級のおっぱいがあるなんて、もはや少将の存在その物がネタ。
もし笑っちゃったら傷付けるとは思いつつも、風呂の中で気絶したら溺死コースなので離れられない。そして敵は依存心の塊、着替えも自分じゃやらないし、身体も洗って貰って当然と思っている。こんなの見ないで風呂介助しろって方が不可能。
ここは潔く……。
ソファーにガイ少将を座らせて、両手を離しても魔力を途切れさせないよう足を絡ませて魔力を流し、少将のシルクのパジャマのボタンを外して行く。パジャマの色は光沢のある紺だ。
ぷちっと小さな音がしてボタンを外すと、出た。メロン巨乳。
ヤバッ。
白くて丸い乳房に思わず見惚れた。
よく見ると張った胸筋の上に乳房が付いてるので、おっぱい自体はそんなに大きく無い。掌に収まる白くて丸い乳房は正に俺好み。乳輪は小さめでピンク。ツンと上を向く乳首が股間直撃。
手を止めた俺を少将がぼーっとした表情で見てる。
ヤバッ。その顔にこのおっぱいは想像を超えて破壊力絶大。
どくんっと心臓が大きく一つ鼓動を打って、続いてどくどくどくどく速くなっていく。
呼吸する薄く開いた唇が妙にエロく感じる。半覚醒状態の曖昧な表情に胸が妙にざわつく。
有りだ。
男におっぱいがあってもキモイだけだろうと思ってたのに、美形のガイ少将には有りだった。
何食わぬ顔で平静を装い、さっさとパジャマの下も脱がす。さすがに失礼なので下着を取る時はタオルで隠したけれど、だったら最初からそうすれば良かったとは後で気付いた。
とにかくされるがままになっている少将をとっとと風呂場に連れて行って、胸元からバスタオルを巻いたままシャワーをかける。しかしタオルの上から濡らすのはどうしたって解けてしまって、タイルの上に水を吸ったバスタオルがどさりと落ちた。
……全裸。
ああああぁぁぁぁぁぁ何やってんだ俺!!
動揺した。ガイ少将の裸体に、見てはいけない物を見てしまってめちゃめちゃ動揺した。
相手は公爵様で騎士様でしかもすこぶる高尚な立場の人で、とにかくみんなの憧れの対象。この人で不埒な事を夢想する奴はいるだろうし、本人もそれが絵になる官能的な美しさ。
いや、仕事。
これは仕事、これは仕事、これは仕事。
黙ったままスポンジを泡立てて肌を擦る。
もうやるしか無い。こっちの心情も状態もまるで関係ない、これは仕事なんだからやるしか無い。
万が一にも出来心で不埒な真似をしてしまったら、覚醒したガイ少将に殺される。敵は鬼の少将なのだ、俺なんかどうやっても勝てる相手じゃないし、土下座したって許しては貰えないだろう。死にたくなかったら無になって任務をやり遂げるしか無いんだ。
「あっ……」
スポンジを持つ手が滑って指先が乳首を引っ掛け、少将が小さな声を漏らした。
何やってんだバカぁぁぁぁ!
俺は死にたくない。死にたく無いんだぁぁぁぁ!!
その晩は眠れずに、応接セットのソファーに横になって悶々と夜を明かした。
少将にはベッドですこーんと気絶して貰う事になるけど、夜は寝てようが気絶してようが大して変わらないからいいでしょう。
それに魔力量が問題で、例え微量でも一晩中貪られるとどれ程持って行かれるか想像が付かない。もしも俺まで魔力切れになってしまったら、万が一少将の寝首を掻きに来た敵に応戦出来ないじゃないか。
昼は介助人兼保父さん。夜はボディーガード。
そんな風に朝から晩までぴったりと張り付いていると、情も湧くし少しの変化にも気付くしで、みるみる回復して少将が元の少尉に戻って行くのが寂しい。
鬼神と呼ばれる人に、俺など必要無いのだから。
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