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第18話
クライル大佐がどこの部屋かは、翌日分かった。
少将の出勤時、到着したエレベーターに乗り込もうとしたら、開いた扉の向こうに大佐が乗っていたのだ。
「あっ……」
思わず呟いた俺に、眼鏡の奥の切長の目がわずかに見開かれる。
しかしクライル大佐は何でも無いようにすいっと視線を外して、ガイ少将に向かって敬礼をしてから端に避けて俺たちを通してくれた。
流れるような所作が美しくて、規律も礼儀もありゃしないあの大佐がまるで上品な騎士みたい。
いつもより疲れた感が有るのはきっと夜勤明けなのだろう、昼も近いこの時間に帰って来たなら、きっとそう。
「大佐、お疲れ様です」
思わず寄って行きかけたけど、付いてこない繋いだ手にぐんっと引っ張られた。
そうだった。
「すみません」
振り返って謝ると、少将は伏せたまぶたで軽く頷いて歩き出した。
ガイ少将が気軽に接してくれるので、自分がどんな大物のお付きなのか自覚が足りなかった。
クライル大佐はエレベーターに乗り込む俺達に、行ってらっしゃいませと声を掛けて礼をする。俺とガイ少将を乗せたエレベーターの扉が閉まって、白衣が見えなくなった。
「同じ階に部屋があるもう一人って、クライル大佐だったんですね」
「気付かなかったよ」
今日のガイ少将の予定は午前中に武器商人との商談、お昼を食べて対魔団の訓練となっている。
商談中にまた三十分程離れさせて貰って、病院の資料室に行きたいと考えている。
精密検査までに様々な症例を調べておきたくて、持ち出せる資料を集めたい。
そもそも魔力切れはよくあるけど、魔力枯渇は稀だ。ガイ少将の場合その原因は人体再生にある可能性が高いけど、もしかしたら原因が他にあるかも知れない。
それから三十分は自己発電出来る今の容態をどう捉えるかなど、調べたい事は沢山ある。
早速行われた商談中に席を外し、資料を抱えて戻った時にはもう話は済んだようだった。
「昼食はどうする?セレスは何が食べたい?」
「少将の好みでいいです」
「じゃあ少しゆっくりしよう。対魔の者が好んで行く店があるようで、私も行ってみたい」
それはもしかして、軍事施設の外にお出かけだろうか?
町に出掛けるのだろうか?
なんでまた急に?
疑問は浮かんだけど、久しぶりに町に行くのはウキウキする。普段は寄宿舎と病院の往復で施設内から出ない生活なので、たまに出掛けるのは楽しい。
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