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第26話
少将が眠るベッドに近付いたクライル大佐は、まず胸ポケットから細い銀縁のメガネを取り出した。今は白衣では無いけれど、顔付きが眼鏡一つでいつもの治癒者の顔になって、ガイ少将に向かう。
まず顔色、瞳孔の開き具合、舌の状態と、首から上を慣れた手つきで診て行き、そしてガイ少将の身体を覆う上掛けに手を掛ける。
「お前ちょっと布団取れ」
「え、いやぁ……はぁ……」
布団を剥いだらすぐバレる。
何しろ俺がついさっき晒しを切り裂いて、そのままシャツの前も合わせず布団を掛けただけなのだから。
もう仕方ない。
俺はクライル大佐の表情を見ながら布団を剥いだ。
現れたガイ少将の上半身を見て、クライル大佐は無表情だった。
人は驚くと表情を忘れるのかも知れない。
瞼を閉じたままの彫刻のようなガイ少将の顔に視線を移し、それからまたおっぱいを見て、顔を見てと、何度か視線が往復してる。
あぁ……分かる。
俺もそうだった。
しかしクライル大佐はおもむろに右手を伸ばすと、少将の左乳房を鷲掴みにした。それはもう、ガシッと音がするんじゃないかと思う程で、大きな手が白い乳房にめり込んでぐにゃりと形を変えた。
「ちょっと、大佐!痛いから!」
ぐにゃぐにゃぐにゃ。乱暴に揉みしだいてる。
そんなの俺だってした事無いのに、ひどい。
「本物なのかと思って。別に少将にそういう性癖があって、豊胸手術でも俺は気にしない」
「本物ですからっ」
俺は急いでクライル大佐の手を押さえてやめさせた。
いきなり何をするのかびっくりだ。
「失礼」
そして次は股間を確かめようとしてる。
それは俺もやったので分かる。でもさせない。
「男性です」
すかさず言って阻止した。
「だよな?」
「です」
「じゃあなんで?」
こうなった経緯を説明すると、大佐は難しい顔で宙を仰いだ。
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