26 / 42

第26話

少将が眠るベッドに近付いたクライル大佐は、まず胸ポケットから細い銀縁のメガネを取り出した。今は白衣では無いけれど、顔付きが眼鏡一つでいつもの治癒者の顔になって、ガイ少将に向かう。 まず顔色、瞳孔の開き具合、舌の状態と、首から上を慣れた手つきで診て行き、そしてガイ少将の身体を覆う上掛けに手を掛ける。 「お前ちょっと布団取れ」 「え、いやぁ……はぁ……」 布団を剥いだらすぐバレる。 何しろ俺がついさっき晒しを切り裂いて、そのままシャツの前も合わせず布団を掛けただけなのだから。 もう仕方ない。 俺はクライル大佐の表情を見ながら布団を剥いだ。 現れたガイ少将の上半身を見て、クライル大佐は無表情だった。 人は驚くと表情を忘れるのかも知れない。 瞼を閉じたままの彫刻のようなガイ少将の顔に視線を移し、それからまたおっぱいを見て、顔を見てと、何度か視線が往復してる。 あぁ……分かる。 俺もそうだった。 しかしクライル大佐はおもむろに右手を伸ばすと、少将の左乳房を鷲掴みにした。それはもう、ガシッと音がするんじゃないかと思う程で、大きな手が白い乳房にめり込んでぐにゃりと形を変えた。 「ちょっと、大佐!痛いから!」 ぐにゃぐにゃぐにゃ。乱暴に揉みしだいてる。 そんなの俺だってした事無いのに、ひどい。 「本物なのかと思って。別に少将にそういう性癖があって、豊胸手術でも俺は気にしない」 「本物ですからっ」 俺は急いでクライル大佐の手を押さえてやめさせた。 いきなり何をするのかびっくりだ。 「失礼」 そして次は股間を確かめようとしてる。 それは俺もやったので分かる。でもさせない。 「男性です」 すかさず言って阻止した。 「だよな?」 「です」 「じゃあなんで?」 こうなった経緯を説明すると、大佐は難しい顔で宙を仰いだ。

ともだちにシェアしよう!