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第28話

という事で早速ガイ少将を連れて自分の職場、治癒の第二隊に行くと、そこは朝から相変わらずの忙しなさで白衣の治癒者がバタバタと走り回っている。 長い廊下を歩きながら、職員ルームが近くなるといつもの喧騒が聞こえて来た。 「クライム大佐、アーさんのお腹が固くて岩のようです」 「またかよ、手当てだ手当て、お前治癒者だろ」 「大佐、イーさんがまた畑仕事中に魔物に刺されたって来てます」 「毒消し!対魔に西区の魔物の退治要請早くしろって言っとけよ、そろそろあの爺さん死ぬぞ。ったく、何度言っても動きゃしねぇ暇人共が」 あぁ……そこに居た頃が懐かしい。 たった数日でもう遠い昔のようだ。 「西区へは今すぐ討伐隊を派遣しよう」 「あぁ?誰だよ偉そうに……」 剣呑に振り返ったクライム大佐は、ここに居るのが誰なのか気付いて言いかけた言葉を途中でやめ、胡散臭そうにニヤリと笑う。 「ガイ少将、おはようございます」 「ミシェール中尉に私の名で連絡を」 「感謝致します」 こんな所に来るはずの無い大物の登場に、その場に居た誰もが手を止めてぽかんと見惚れてる。 「大佐、検査に来ました。場所をお借りします」 「あぁ、後で俺も行く」 「必要無い、セレスだけでいい」 「片手では出来ないのでもう一人必要です。クライム大佐が適任と思います」 「しかし……」 クライム大佐の同席を嫌がるのはおっぱいがバレる心配だろう。 「大丈夫です、大佐は知っています」 こっそり言うと、少将は無表情で不機嫌を垂れ流した。 本人の機嫌の良し悪しは検査結果に影響しないので放置して、検査室に移ってまず病衣に着替えて貰う。 簡単に脱ぎ着が出来るAラインのストンとした薄いブルーのワンピースで、もちろん晒しも取って貰った。こんな物は誰が着ても同じはずなのに、長身で細マッチョの少将は何を着ても似合う。ただ、隠していたおっぱいの違和感が凄い。病衣の胸を突き上げて、乳首がここにありますよとツンとしてる。 それに気付かないフリをして、まずはバイタルチェックから。 緊急の場合は魔力で治癒が出来るこんな時代でも、数値で表す事で異常があればはっきりする。 採血を取って唾液も取ってと、軽い物から進めて次は身体の中を撮影する段まで順調に進んだ。臓器の位置、形、骨格。全て元通りかフィルムに念写して確かめたい。 そろそろ人手が欲しいからクライル大佐が来てくれるといいんだけどなと思いながら、俺は念写の準備をする。 「体内を念写しますのでちょっと脱いでください」 言うとガイ少将はぎょっとした表情を一瞬だけ見せたけれど、嫌そうに眉をしかめつつも検査と割り切ったのだろう、頷いた。 「失礼しまーす」 するりと肩から病衣が滑り落ちて、上半身が露わになる。 首から肩にかけてのなだらかなラインが美しい。閉じたカーテンからの微弱な光が白く淡く、おっぱいを丸く描き出していた。 目の毒。 どうしてフラたばかりの相手の、こんなに綺麗な裸体を拝まなきゃならないんだ。 その時ドアをノックする音が静かに聞こえて、きっとクライル大佐が来たのだろう、息が詰まりそうになっていた俺はホッとした。 「開いてます」 「失礼致しま……」 しかし、言いかけた言葉を途中で途切れさせて大きな目を溢れる程に見開いたのは、三十路の小汚い白衣のおっさんでは無くて、長い金髪を後ろで一つに結んでスラリと背中に落とした黒い騎士団の制服。 ミシェール中尉。 やばい。 おっぱい見られた。

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