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第38話

二日後、ガイ少将の精密検査の結果が出た。 予想通り身体には異常が無くてすこぶる健康。そして問題のおっぱいの中身は……。 引き伸ばした念写での透過写真を見ながら、俺とクライス大佐は無言になってしまった。 渦を巻いているのだ。乳房の左右が片方ずつ白と黒の渦巻き模様。 通常水分や骨は白く写るが、これは……。 狭い診察室にはクライル大佐と俺、それに患者本人のガイ少将が詰めている。 白衣の俺たちが無言なので少将も無言で診断結果を待っている訳だが……。 「少将、大変失礼なんですが、良ければ触診させていただけますか?」 大佐の申し出に、俺は即座に首を横に振った。 「ダメですっ」 俺も触った事無いのに、って言うか大佐は一度揉んだくせに。 「だけど渦巻きってどうなってんだよ、何が渦巻いてんだよ。そんでこの中心部見てみろ、絡み合って渦にもなってない。これじゃ外に出られない」 「何が外に出るんですか。そしてこれは出るもんなんですか」 「知らねーよ、それを調べるんだろうが」 それはそう。 しかし、それにしても。 渦巻きの中心部に黒く抜けている小さな丸い影があって、おそらく乳首と思われる。乳房の大きさに大して理想的なサイズ。 いや、そこじゃない。大佐の言う通り何かが出るのだとしたら普通に考えて乳首から出ると思うけど。 「じゃあ注射で中の物を少し吸い出していいですか?複数箇所から。出来れば乳首からも」 「ひーっ、痛いですそれ、絶対痛いですっ」 「セレスに言って無い。お前うるさいよ、少し黙ってろ」 自分が痛いわけじゃ無いので注射も慈悲無くサクサクやるけど、さすがに乳首は痛いだろう。乳首に針を刺せと言われたら、そんな俺でも躊躇する。 「断る。私が知りたいのは中身では無くて、コレの消し方だ」 少将にはっきりと断られて、そうだろうなぁと思う。 「しかし除去するにも……これは予想ですが、乳房の中身は魔力じゃないかと思っています。ガイ少将の現段階での症状は魔力枯渇となっていますが、実は枯渇では無くて内側にこもって出て来れないのではないかなと」 困り顔で言うクライル大佐を見て、そういえばと俺は思い出した。 「いつだったかな、俺が魔力切れを起こして少将から貰ったとき、若干ですけどおっぱいが小さくなったような気がしました」 変態と思われそうだから言わなかったけど、気のせいじゃなくて本当に小さくなっていたとしたら。 「なるほど、コレの中身が。じゃあ魔力は写真に映るのか?」 「いや、それは……」 そんな事は聞いた事も無い。 せめて検査をと、もう一度進めるクライル大佐に少将は首を横に振る。 本人の同意が無ければ検査は進められないので、俺とクライル大佐は目を見合わせて表情を曇らせた。 「失礼ですが少将、何故嫌なんですか?」 そう尋ねると、ガイ少将はふーっと大きなため息を吐いて片手で口元を覆ってしまった。 「検査を受けたのはセレスとの約束があったので仕方なく、だ」 「はい」 「だからもう、果たした」 「いや、この結果じゃ分かんないんでもう一回だけ」 少将は口元を隠したまま視線を彷徨わせて言う。 「……見られたくない」 「は?」 「は、恥ずかしいだろう、こんなの」 ぽつりと呟いた少将がヤバイ。 可愛い。 「じゃあ触診も検体採取もセレスがやるならどうです?」 大佐にそう尋ねられて、少将は迷って迷って迷った末にぎこちなく頷いた。 ヤバイ。 俺ならいいのか。 めちゃめちゃ可愛い。

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