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第41話
「えっ」
「えっ」
少将の胸元で、左の乳首に吸い付いた俺と、そんな俺を驚いた顔で見下ろす少将の視線が思い切りぶつかった。
同時に蕩けそうな乳首が俺の上顎と舌の間で絵も言われぬ甘い存在感を示す。
「せ、セレスっ!」
「あ、すみません。垂れ流すのはもったい無いと思ったので」
内心の動揺を押さえつつ、当たり前を装った。
突然乳首にしゃぶり付かれて驚かない人はいない。だから少将が驚くのは当然で、しゃぶり付いた方の俺が一緒になって動揺していたら目も当てられ無いので、この場合は平然を装うしか無い。
「やっぱり魔力ですね。ほんの少しですが口から接種したので、なんだかほわほわします。手からの接種と同じ感じで、満ちて来る。そろそろ俺の方が魔力切れ起こしそうだったのかな?前回貰ったのっていつでしたっけ?」
普通を装っているつもりなのに、やばい、妙に口数が多くなってしまった。
「忘れたけど……」
少将の方は俺から取り返したおっぱいを隠すみたいに前で腕を組んで、ダメージを食らった顔をしている。
可愛い。
俺から見ればそんな仕草も表情も可愛いの一言でしか無い。
「セレスは、魔力切れになりそうなのか?」
少将は戸惑いつつも、取り乱す事は恥と思ったのか無理に会話を繋げようとする。それが乱れまくっている心情を表していると思った。
きっとどうしたらいいか分からないのだろう、可愛い。
「そうみたいです。後で下さい」
こんな時に男という者は狡い方、狡い方に頭が回る。悲しい性。
「あ、やっぱ貰う前に切れると困るんで、今下さい」
「あ?あぁ」
少将が前で組んだ腕を解き、俺へと手を伸ばして来る。だから俺はその手を避けて、もう一度乳首に口を付けた。
「……!!」
そのまま舌の上で転がして軽く吸う。
溶けそう。
弾力のある乳首が溶けてしまいそうに柔らかく、そのまま吸うと魔力が口の中に満ちて吸収される。
……ん、という鼻にかかった吐息がどっちの物かなんて、もう分からない。俺は鼻の頭を柔らかなおっぱいに擦り付けて埋もれさせながら、舌で転がして味わう。
と、さすがにドンっと強く胸を突き飛ばされた。
額に手を付かれて遠ざけられて、でもそんな狼狽えまくった必死な表情が可愛い。
「すみません、嫌でした?」
「お前、バカだろうっ!」
「別にどこから貰っても一緒かなと思って、魔力垂れ流してるのももったい無いですし。少将にとって女みたいなおっぱいがそんなに恥ずかしいとは思わなくて、すみません」
そう言うと、目を潤ませて睨んで来る。
普段の少将に睨まれたらチビリそうだけど、今の少将は可愛いだけだ。
「恥ずかしいとかでは無く、普通しないだろう」
「そもそも普通じゃないじゃないですか。還元出来ないかなぁ、俺の魔力となんかちょっと違うんですよね、魔力の感覚が。だからそこから出てるのは少将本来の魔力だと思うんです、どうにかして返せないかなぁ」
俺が少将の乳首から吸い出した魔力だけを少将に戻す。それが上手くいけば魔力枯渇が治りそうなんだけど。
と、わざわざ声に出してぶつぶつ呟き始めると、少将は俺に詰め寄る事を諦めたようで、脱いでいたシャツを取った。
口先だけすみませんと言うけれど、自らの行いを反省もせずに別の事を考え始めた態度は見れたもんじゃ無い。
分かっているが、ここで平謝りするのも違う。俺は悪いなんて思って無い。太々しさなら自信があるので、必要なら何度でも乳首をしゃぶるつもりだと態度で表しておく。
しかしそれは決して欲に塗れた下心からでは無く、治療なのだ、処置なのだ。
俺を拒むなら、せめてそのおっぱいだけは俺の物にしてやる。
少将が俺を好きになってくれないかな、なんておこがましい望みは捨て去った。元々高嶺の花過ぎるし、そばに性格悪い美人も居る事だし、下々の俺になんか最初から爪の先程の可能性も無かった訳だ。
それでいい。
だけどおっぱいはやらない。
俺が作ったんだから俺の物だろう。
むちゃくちゃな理屈だけど、平民怒らせるとただじゃ許されないって思い知らせてやる。
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