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第17話 教科書ですか?

2ー6 教科書ですか? 俺は、怒っていた。 俺がもといた世界を舐めんじゃねぇぞ! 確かに、俺は、ヤンキー育成高校みたいな学校に通っていたけど、字ぐらい読み書きできるって! ガーファスが戻ってくることはなかった。 しばらくすると、イーサンが数冊の本を抱えて部屋へと入ってきた。 俺は、イーサンになんか嫌みの1つも言われるんじゃないかと思って身構えていた。 だけど、イーサンは、無言で俺の前に持ってきた本を置いただけだった。 「これは?」 「これは、王立学園の一年生の教科書です」 「ああ?」 俺は、ちらっと横目でテーブルの上の本の山を眺めた。 イーサンは、突然俺に頭を下げた。 「ガーファスが失礼なことをして、申し訳ありませんでした、レン様。以前この世界にこられた聖母であるサブロウタ様が文字が読み書きできなかったものですから、てっきりあなたもそうなのかと思っていたようです」 「いや、俺も大人げなかったかも」 俺は、まだ怒っていたんだが、テーブルの上の本を一冊手にとりパラパラと捲ってみた。 うん。 これ、俺のいた世界の中学レベルの本じゃね? 科目も、数学、国語、政治・経済、それに小学生レベルの理科しかなかった。 これが、ほんとに王立学園の教科書なの? 楽勝じゃね? ていうか、俺、もしかしてこの世界じゃ天才? 俺は、にやりと笑って最後の一冊に手を伸ばした。 あれ? 「何、これ?」 「どれですか?」 イーサンが俺の持っている本を覗き込んだ。 近い、近いよ! 俺は、焦っていた。 だが、イーサンは、かまわず俺に体を近づけた。 あっ、なんか、いい匂いがする。 といっても、香水とかの匂いではなかった。 イーサンの男らしい匂いだ。 俺は、頭がぼぅっとなっていた。 「ああ、これは、魔法学初歩ですね。どこが、わからないんですか?」 イーサンに聞かれて俺は、言葉に詰まった。 イーサンは、俺をその澄んだ瞳で見つめている。 俺は、思わず目をそらせた。 「・・全部、だよ」 俺は、イーサンに告げた。 「この本は、文字も読めないし、ぜんぜんわからない」 「そうなんですか?」 イーサンが少し考え込んで、俺に、失礼します、と呟いて部屋を出ていった。 なんだろう? 俺は、イーサンの態度に不安を感じていた。

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