30 / 123
第30話 俺のことは、ほっといて!
3ー9 俺のことは、ほっといて!
俺たちは、それぞれの部屋へと導かれると、しばらく荷ほどきやらなんやらで忙しく立ち働いた。
といっても、忙しかったのは使用人さんたちだったのだが。
俺の部屋には、2人の部屋付きの使用人がいた。
1人は、ひょろりと背の高い眼鏡の茶髪に緑の目をした少年でギルバート・カーズと名乗った。
もう1人は、小柄で金髪の、青い目をした少年で、ラウル・カーズと名乗った。
2人とも、頬にそばかすが散っていて、女の子と言っても通用しそうなぐらい可愛らしい少年たちだった。
2人は、兄弟でギルバートが15才、ラウルが10才という幼さだった。
ギルバートが言うには、カーズ家は、一応貴族の末席に名を連ねる高貴な家系で、代々、王家の従者をつとめているらしかった。
「何か、ご用があればなんでも我々に仰ってください、聖母様」
ギルバートが慇懃無礼に頭を下げたので、俺は、2人に頼んだ。
「俺のことは、聖母ではなく、連太郎、と呼んでくれ。それから、俺は、自分のことはだいたい自分でできるから、ほっといてくれたらいいからな」
「はぁ・・」
俺の言葉をきいて、2人は、目を丸くしていた。
「しかし・・」
俺は、ぎろっと2人を睨むと、命じた。
「これは、お願いじゃない。命令、だからそこのところ、よろしく」
俺は、そう言うと、2人にかまわずに寝室の奥にある浴室へと向かった。
少し、埃っぽかったので風呂に入って汗を流したかった。
残りの荷ほどきは、その後でゆっくりしよう。
2人の少年たちは、浴室へと向かう俺の後ろをついてきた。
どうやら、困惑している様だった。
無理もない話だ。
彼らからすれば、俺は、我が儘なやりにくい主人なのかもしれない。
だが、俺からすれば、当然のことだった。
子供の頃から俺は、いつも1人だった。
両親は、学者でいつも家を留守にしていた。
俺を面倒見てくれてたのは、じいちゃんだった。
だが、じいちゃんは、子供の近寄りがたい大人だった。
俺は、いつも、1人で。
いつの間にか、自分のことは自分でやるということが当然のことになっていた。
それに、俺には、秘密があった。
アメリに吸われて赤く大きくなってしまった乳首のことは、絶対に誰にも知られたくはなかった。
ともだちにシェアしよう!