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第31話 風呂に入りたい!

3ー10 風呂に入りたい! 俺は、浴室へと行き、風呂に湯を張ろうとした。 浴室には、大きめの白い陶器の浴槽があった。 だが、どこにも蛇口らしきものはなかった。 俺は、浴室の中を見回した。 お湯は、どこから出るんだ? というか、水は、どこから汲めばいいわけ? 俺は、この世界に来てからは、ほぼ回りの人々に世話を見られていた。 というか、ほぼ、イーサンの世話になっていた。 イーサンは、俺の心を読むかのように痒いところに手の届くように俺の世話を焼いてくれていた。 だけど、それでは、ここを出ていくときに困るに違いない。 だから、俺は、自立を目指して自分のことは、自分ですることにしたんだが。 まさか、風呂も自分で入れられないのか? 俺が自分の無能さに焦っていたところ、ギルバートが背後からそっと俺に声をかけてきた。 「あの、失礼します。せ・・いや、あのレンタロウ様?」 「なんだよ?」 俺は、不機嫌にギルバートのことを振り返った。 ギルバートは、俺に申し訳なさげに説明してくれた。 「この城では、ほとんど全て、魔法化されておりますので、水は、生活魔法で出してお湯にしています」 マジ? 生活魔法って、何? 俺は、ハトマメ状態だった。 言っとくけど、俺は、まだ、魔法はからっきしだ。 属性がわかって、精霊と契約したからっていっても、それだけじゃ魔法使いにはなれない。 魔法の勉強をしなくてはならなかった。 俺は、困っていた。 神殿では、全てイーサン任せだったからそんなこと知らなかったし。 がっくりと肩を落とした俺の横で、カーズ兄弟は、生活魔法とやらで水を出し、それを温めてお湯へと変化させるとみるみるうちに大きな浴槽をお湯で満たした。 「お前たち、すごいな」 俺は、2人の傍らで見ていたのだが、生活魔法とやらに目を見張っていた。 なんかわからないけど、便利な力だな! 「それほどでは」 ギルバートは、少し頬を赤く染めていた。 たぶん、生活魔法を誉められたことなど今までは、なかったのに違いない。 カーズ兄弟は、風呂にお湯を張り終わると、俺の服を脱がそうとした。 「えっ?ちょ、待ってくれよ!」 俺は、2人の手を振り払った。 「俺、自分のことは、たいてい自分でできるから」 俺は、なんとかして2人を浴室から追い払おうとしたが、それは、2人に強固に抵抗されてしまい、結局、2人の見守りのもとで入浴することになった。 俺は、女の子みたいに大きめの布で体を隠しながら風呂に入った。 体を洗い、布を体に巻き付けると、俺は、湯船に浸かった。 ほっとする。 長旅の疲れが吹き飛ぶようだった。 といっても馬車に乗ってただけなんだがな。 俺、こっちの世界に来てからイーサンに甘えていたのかも。 俺は、ちょっと気を引き締めなくては、と思っていた。 これからは、学園で多くの人に囲まれて暮らさなくてはならないんだし、もっと気を引き締めなくては。

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