34 / 123
第34話 毒ですか?
4ー1 毒ですか?
あやうくレイテにやられそうになった俺は、いろいろなものを失ってショックを受けていた。
いろいろなものって何かって?
男の純情とか、恋心とか、それに。
「俺のファーストキスを返せぇっ!」
俺は、レイテが去っていった後、ベランダから王宮へ向かって叫んだ。
「どういうこと?レン」
隣の部屋からベランダへとアメリが出てきた。
ええっ?
ベランダで部屋が繋がってるの?
この建物の構造、おかしくないか?
俺のプライバシーとか!
「なんでもねぇし!」
俺は、アメリに背を向けると部屋へとさっさと戻ろうとした。だが、アメリは、ちょこちょこと俺の背後からついてくると俺の部屋へと侵入してきた。
「ファーストキスって、どういうこと?」
アメリに問い詰められて、俺は、目をそらせた。
アメリは、あくまでも無邪気げに俺を見上げてきいた。
「誰と、ファーストキスしたの?」
「それは・・」
俺は、目を泳がせていた。
言えない。
レイテにやられそうになった上に、キスまで奪われたなんて。
「もう、忘れさせてくれ」
俺は、そう言うとソファに腰を下ろした。
すかさずギルバートがお茶のカップを差し出してくる。
俺は、それを受け取り飲もうとした。
けれどもすぐにカップは、アメリに奪われた。
アメリは、カップをギルバートに差し出すとにっこりと微笑んだ。
「まずは、毒味をしないとね。お前が、まず、飲んでみてくれる?」
はい?
俺は、呆れてアメリを見た。
「何、言ってんだよ。んなことしなくっても」
「お許しください!」
ギルバートがその場にひれ伏した。
ええっ?
俺は、床の上に座り込んでいるギルバートを見て、それから、勝ち誇ったような顔をしているアメリを見た。
マジですか?
「誰の差し金だ?」
アメリは、ギルバートに訊ねた。
「反王制派か?それとも、第2皇子の一派か?」
「それは・・お許しください」
ギルバートは、必死にアメリに頭を下げたが、アメリは、冷酷だった。
「お前が言えないというなら、代わりにそこにいるお前の連れのガキに飲んでもらってもいいんだぞ?」
アメリがラウルの方を見た。
ラウルがガタガタと震え出す。
ギルバートは、アメリにすがり付いた。
「お、弟は、関係ありません!どうか、それだけは、勘弁してください、神子様!」
「なら、誰の差し金か吐け!」
アメリが悪役としか思えない形相でギルバートの胸元を掴んでその目の前にお茶の入ったカップを突きつけた。
ギルバートは、涙目になりながら小声で答えた。
「・・ケイラス様のご命令です・・」
ケイラス?
俺は、小首を傾げた。
ケイラスって、誰だっけ?
ともだちにシェアしよう!