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第44話 マナの匂い
4ー11 マナの匂い
「・・寝てないし」
俺は、アメリに告げた。
「俺は、イーサンと寝てない」
「ウソ!」
アメリがわっと泣き出した。
「あんなになっちゃってたレンを、前にして手を出してないわけないもん!」
「泣くなよ、アメリ」
俺は、アメリの頭をそっと優しく撫でた。
「本当に、俺は、イーサンに抱かれてねぇし」
そう。
イーサンは、俺と契約を結んだだけだ。
神子と同じように俺のマナを吸うことと引き換えに俺を誰からも守る、と。
「ウソだ!」
なおも泣きじゃくるアメリを、俺は、なだめながら繰り返した。
「本当だって。イーサンは・・あいつは、俺の騎士、だ。・・決して、俺に手を出したりはしない」
そうだ。
イーサンは、俺にかしづく騎士だ。
俺を他の誰からも守る、そう誓った俺だけの騎士。
「本当に?」
アメリは、えぐえぐっと涙を流しながら俺を見上げた。
俺は、微笑んで頷いた。
アメリは、俺の胸に顔を埋めると、しばらくじっと抱きついて泣いていた。
「レン・・」
俺は、アメリの背を撫でてやった。
アメリは、俺に抱きついたまま囁いた。
「俺・・悔しい・・」
アメリは、泣きながら俺に訴えた。
「こんな子供で・・悔しいよ、レン。俺も、あいつぐらい大人ならよかったのに・・」
「あぁ?」
俺は、アメリを優しくあやしてやりながら話した。
「すぐに、大きくなれるさ」
「レン・・」
アメリは、俺を見上げて訊ねた。
「俺が大人になるまで、他の誰のものにもならないで!お願いだから」
「ああ、わかった」
俺は、アメリに向かって微笑みかけた。
「俺は、決して、誰のものにもならない。だから、もう泣くな、アメリ」
アメリは、ゆっくりと深呼吸をした。
「レンの匂い・・いい匂い・・」
はい?
俺は、アメリの背を撫でながら、アメリの言葉をきいていた。
アメリは、俺の胸の中で大きく息を吸い込んだ。
「マナの匂いがする」
なんだ?
俺は、自分の胸に顔を埋めてくんくん鼻をならしているアメリを見ながら考えていた。
マナの匂いって、何?
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