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第50話 ルイス

5ー6 ルイス これが、身体強化術ってやつなのかな? 俺は、自分の拳を見つめてにやっと笑った。 ノエルは、壁に激突すると、意識を失ったらしく教室の床の上に倒れ込んだ。 「ノエル先生を殴った!」 「聖母様が!ノエル先生を殴ったぞ!」 誰かが騒ぎだして、教室の中は、蜂の巣をつついたように騒がしくなった。 「聖母様を取り押さえろ!乱心されているんだ!」 誰かが声をあげて、俺の腕を掴んできたので、俺は、そいつのことを振り払った。 俺は、上半身裸のままで教室から駆け出していた。 走りながら、なぜか、涙が止まらなかった。 「チクショウ!」 俺は、走り続けたが、誰も、俺を追いかけてくるものはいなかった。 学園の門から外へと駆け出して、王宮の広い庭へと、俺は、駆けていった。 そこは、庭というよりは、森という方がいいような場所だった。 鬱蒼と繁った木々の間を、俺は、縫うようにして走り続けた。 そのうちに雨まで降ってきやがった。 俺は、涙か雨かもわからない滴を拭いながら大きな木の陰にあった洞穴へと駆け込み身を隠すと荒い呼吸を整えた。 俺は、ぶるっと身震いした。 上半身裸のところを雨に打たれて、すっかり体が冷えきっていた。 「・・ちくしょう・・」 俺は、洞穴の隅にうずくまって体を丸めて震えていた。 寒くって。 俺は、この異世界に来て初めて、この世界からもとの世界に帰りたいとはっきりと思っていた。 しばらくして誰かの足音が近づいてくるのがきこえて、俺は、息を殺して体を固くした。 誰だ? 「レン・・」 アメリ、か? 俺が顔を向けるとそこには、アメリではなくルイスの姿があった。 「大丈夫、か?レンタロウ」 ルイスの言葉に俺は、ふいっとそっぽを向いた。 「・・なんの用だ?」 「ずいぶんとつれないな」 ルイスは、苦笑しながら俺の側へとやってくると、隣に座り込んだ。 微かに俺たちの体は、触れ合っていた。 「冷たい・・こんなに、震えて・・」 「うるさい!もう、俺のことはほっといてくれ!」 「ほっとけるわけがないだろ!」 ルイスは、着ていた制服の上着を脱ぐと俺の肩にかけると、俺の冷たい体を抱き寄せた。 暖かい。 ルイスの体が触れるところがほんわりと温かい。 ルイスの体温に俺の凍えた体が緩んでいくのが感じられた。

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