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第58話 男の嫉妬ですか?

6ー1 男の嫉妬ですか? 俺の初染めの儀は、それから3日後の新月の夜に行われることになった。 グーリスのくそじじいは、そのままやる気満々だったんだが、俺があまりにびびりまくってたせいでアメリの他の4人の男たちが手を出しづらくなっていたらしい。 そこでじじいの奴は、儀式を3日後に伸ばすことにしたというわけだった。 その日は、俺は、自分の部屋に戻って休むことが許されたんだが、結局、一睡もできなかった。 翌朝、何事もなかったかの様に俺のもとへと顔を出したイーサンを睨み付けて、俺は、トゲのある言葉をぶつけた。 「よく顔を出せたな、イーサン。この裏切り者が!」 「はい?」 イーサンは、すっとぼけた様子で俺にきいてきた。 「なんのことですか?レン様」 「とぼけるな!昨日の、あの・・俺の・・」 「お初染めのことですか?」 イーサンが事も無げに言ってのけたので、俺は、かぁっと頭に血がのぼって声を荒げた。 「よくも、ぬけぬけと!」 「仕方がありません」 イーサンは、しらっと答えた。 「長老のご命令には、逆らえませんから」 「何が、長老のご命令には、だよ!」 俺は、イーサンの胸ぐらを掴んだ。 「お前は、この世界の全てから俺を守ってくれるんじゃなかったのかよ?」 「だから」 イーサンは、俺を冷ややかに輝く深いブルーの瞳で見つめた。 「あなたが悪いのです、レン様。私を選べなかったあなたがいけない。私を選んでくれさえすれば、私があなたをこの世の全てのものからお守りすることができたのに。あなたは、私を選ばなかった」 「それは・・」 俺は、ふぃっと目をそらせた。 だって。 仕方ないじゃないか! 5人とも仮面をつけててどこの誰かもわからなかったんだから。 俺がそう言おうとしたとき、イーサンが自分の胸元を掴む俺の手をふわっと握りしめた。 「覚悟してください、レン様。男の嫉妬は、怖いものですからね」 はい? イーサンは、両手で包み込んだ俺の手にそっと口付けて上目使いに俺を見た。 「愛しています、レン様」 そうしてイーサンは、いつもと変わらない顔で俺の世話を焼き始めた。

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