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第59話 罪深い書物ですか?
6ー2 罪深い書物ですか?
俺は、部屋で魔法学の自習をするようにとイーサンに言われていたのだが、王立学園の教科書を見るのも嫌だったので、たまたま部屋をうろついていたギルバートに話しかけた。
「ギルバート・・ちょっと、来い」
「はい?」
ギルバートは、不審げな眼差しで俺を見つつも俺の方へとよってきた。
「なんですか?レンタロウ様」
「あの・・ちょっと、頼みたいことが・・」
俺は、ギルバートの耳元でもごもごと囁いた。
俺の頼み事をきいたギルバートは、頬を真っ赤に染めた。
「な・・そんなもの、ここには、ございませんよ!」
「どっかに一冊ぐらいある筈だ。いいから、探して持ってこい!至急だぞ!」
俺は、真剣な表情でギルバートにすがりつくようにして頼み込んだ。
「一生のお願いだから!」
「・・わかりました」
ギルバートは、頬を赤く上気させたまま頷いた。
「しばらくお待ちください、レンタロウ様」
俺は、ギルバートが戻ってくるまで、落ち着きなく部屋の中をうろうろと歩き回っていた。
ギルバートは、さすがに優秀な奴だ。
奴は、すぐに目的の品を手に入れたらしく俺の部屋へと戻ってきた。
「ありましたよ、レンタロウ様」
緊張した面持ちで息を弾ましているギルバートを見て、俺は、奴の方へと駆け寄った。
「やっぱりあったか!」
俺は、ギルバートにせっついた。
「早く、出せ!」
「もう、急かさないでくださいよ、レンタロウ様」
ギルバートは、きょろきょろと周囲を警戒しながら自分の上着の懐に隠していたものを取り出すとそっと俺に渡した。
それは、古びてボロボロになった薄っぺらい本だった。
「これ、ロドニー神官長様のお部屋から勝手にお借りしてきたんです。早く読んで返しとかないと俺がお叱りを受けますから」
「わかってるって、ギルバート」
俺は、その薄い本を手に取ると使い込まれた表紙を読んだ。
『ルーリーフ伯爵夫人の恋人』
なんか、文学的な題名だな。
「こんなんで本当に大丈夫なのか?俺が言ったのは」
「大丈夫、です」
ギルバートは、また頬を赤く染めた。
「これが、たぶん、ここにある1番淫らで罪深い書物です」
マジか。
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