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第62話 行くよ!
6ー5 行くよ!
「レンは、かわいくって、きれい、だ」
ルイスが頬を赤らめて、俺に微笑んだ。
「黒い髪も、夜空のような瞳も、この世のものとは思えないぐらい美しい。こんな人の夫になれるなんて俺は、運がいい」
「嘘、だ」
俺は、ふぃっと顔をそらした。
「俺は、かわいくも、きれいでもないし。お前らが気の毒だよ。俺なんかの相手させられて」
「そんなわけ、ないだろう!」
ルイスが怒ったように声をあげた。
「レンみたいな美しくて可憐な人は、この世界のどこにもいないよ!」
「そんなことが」
俺は、涙目になってルイスを見ていた。
「信じられるかよ!」
「信じてくれ、レン」
ルイスが囁いた。
「お前に魅了された俺たちのことをもっともっと信じて。そしたら俺は、お前のためになんだってしてみせる。この世界を丸ごとお前に差し出してもいい。約束するよ、レン。俺は、一生、お前だけを愛する。だから」
ルイスは、俺をじっと熱い瞳で見つめた。
「お前も俺のこと、少しは、好きになってくれ」
「ルイス・・」
ルイスは、俺のことをぎゅうっと抱き締めると俺の耳元へと唇を寄せた。
「レン・・」
俺たちは、しばらく抱き合ったままじっとしていた。
お互いの体温が伝わってくる。
ルイスがいっそう強く俺を抱き締めた。
俺は、ルイスに抱かれてあの日のことを思い出していた。
ルイスに初めて抱かれたあの雨の日のことを。
「ルイス・・ありがと」
「えっ?」
「あのとき、俺のこと助けてくれただろ」
「ああ」
ルイスは、俺の体を抱く手に力をこめた。
「そんなの・・ぜんぜん、違うんだ。俺は、あのとき、ほんとは、あいつらと同じだった。お前のこと、欲しいと思っていたんだ。あの場でお前を押し倒してめちゃめちゃにしたかった」
マジですか?
俺は、痛いぐらいルイスに抱き締められてその香りに目を潤めていた。
ルイスは、雄の匂いがした。
なのに、俺は、それが嫌じゃなかった。
俺たちは、その日の午後を一緒に過ごした。
ベッドの上でお互いを抱き締めあって。
俺は、ルイスの胸に耳を押し当ててルイスの心臓の音を聞いていた。
俺たちは、いろいろな話をした。
これまでのこと。
家族のこと。
将来の夢。
そして、学校の話も。
「俺、転校することにしたんだ」
ルイスが不意に漏らした。
「もっとレベルは下がるんだけど、平民にも開かれた学校にかわることにしたんだ」
「マジで?」
「 ああ、同じ王都にある学校だし、家からは近いしな」
ルイスの話をきいて、俺は、思わず言っていた。
「俺もその学校に転校したい!」
「本気かよ?」
ルイスが真面目な表情をした。
「平民の方が多いような学校だぜ?聖母様の来るようなとこじゃない」
「いや、俺、絶対、そこに行く!」
俺は、もう決めていた。
ルイスは、呆れたみたいにくすっと笑った。
「なら、一緒に来いよ、レン」
「うん」
俺は、頷いた。
「行くよ、ルイス」
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