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第80話 アルバイト始めました。

8ー1 アルバイト始めました。 俺が神殿を出てから数週間が過ぎた頃のことだった。 俺は、ルイスの紹介でアルバイトを始めることになった。 というのも、俺は、今、神殿から出て自分の家で暮らしているわけだったが生活費は、神殿から出してもらっているのだった。 こんな囲われもの的な生活は、嫌だ! そう思った俺は、ルイスに相談して仕事を紹介してもらったのだ。 ルイスは、というか、ルイスの親父さんであるリーファス・アイラスさんは、リーゼンベルグ王国内でも高名な商人だった。 本職は、他国との貿易だったが、それ以外にもいろいろ手広く商いをしていてそのうちの1つである薬屋さんで、俺は、放課後に働かせてもらうことになった。 すでに新しい学校でもクラスに馴染んでいるルイスと違って、俺は、魔法学園でも浮いた存在だった。 それは、俺のこの黒い髪と目のせいでもあった。 明るい髪色のみんなと違い、1人だけ黒髪ということもあってか、なんというか、俺は、クラスで浮いていた。 というか、なんというか、クラスメートたちの男子校に1人だけ男装の女生徒が入ってきましたよ、みたいな反応に、俺は、うんざりしていた。 この世界のことを学んで、ここで自立して生きていくという予定の俺だったが、そんなこんなでまだ少しも馴染めていないのだ。 ルイスは、そんな俺に助け船を出してくれた。 「なら、町でちょっと働いてみる?」 俺は、ルイスの提案に飛び乗った。 これは、神殿からの真の自立のためにも、この世界を知るためにもナイスな案だった。 さっそく善は急げで、俺は、学校が終わってから放課後にルイスの親父さんが経営している店の1つで働き始めた。 俺の仕事の内容は、ただの店員さんだった。 客への対応とか、店の掃除とか、商品の補充とかが主な仕事だった。 店長は、魔法薬師のフェイスタさんという疲れた感じの中年のおじさんだ。 「フェイスタさんは、腕のいい薬師なんだけど、気難しくって客が怖がってるんだよ」 というルイスの言葉通りに、店には、客がめったに訪れることがなく閑古鳥がないていた。 フェイスタさんは、最初、俺のことを受け入れることを嫌がっているようだった。 「ボスの命令だから仕方がないが、くれぐれも余計なことはしないでくれよ」 初めて店に行った日にフェイスタさんは、俺にそう言った。 俺は、奥のフェイスタさんが働いている部屋に入ることは許されなかった。

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