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第82話 マナ切れの病

8ー3 マナ切れの病 俺に店に来るなと言われて、アメリは、目をうるうるさせて俺に泣きついてきた。 「ごめんね、レン。でも、レンのことが心配で・・」 くっ。 俺は、アメリに泣かれると弱かった。 なぜか、アメリの涙を見ると胸が痛くなる。 いや、抽象的にではなく、実際に、ということだがな。 アメリが赤ん坊の頃から乳をやっていたせいか、アメリに泣かれると乳が張ってくるのだった。 「んっ・・」 俺が胸を押さえて吐息を漏らしたのを見て、アメリは、心配そうに俺のことを覗き込んできた。 「レン、どうしたの?体調が悪いのなら仕事は今日は、お休みにしたら?」 「なんでもねぇし!」 俺は、痛む胸を押さえつつフェイスタさんの店へとその日も普段と同じように向かった。 その日は、幸いにも店は暇で、俺は、店のカウンターにもたれてぼんやりとしていた。 もう、そろそろ店を閉めようかなと思ったときのことだった。 1人の男が幼い子供を抱いて駆け込んできた。 「頼む!フェイスタ!この子の熱が下がらないんだ!」 その若い男は、フェイスタさんの知り合いの人で、フェイスタさんは、男の人の抱いている子供を店の奥の部屋へと運び込んだ。 そこは、診療室になっているのだが、部屋の中央に置かれたベッドの上で熱にうかされ荒い呼吸をしている子供をしばらく診察するとフェイスタさんは、頭を振った。 「この子は、もう助からん」 「そ、そんな!」 「マナ切れの病だ。こうなっては、もうどうすることもできん。何か、マナを与えてやる方法でもあれば・・」 フェイスタさんの言葉に、俺は、その子供の側へと駆け寄ると、フェイスタさんに訊ねた。 「あの、マナを与えればいいんですか?」 「ああ、だけど、そんなことは・・」 俺は、躊躇することなく服を脱ぎ捨てると、ベッドの上の子供を抱き寄せた。 フェイスタさんが驚いて俺を止めようとした。 「何をするつもりだ?レンタロウ」 「いいから、黙って見てて」 俺は、子供の口許へと乳首を差し出した。 子供の熱い唇が弱々しく俺の胸に触れた。 「吸うんだ!がんばって!」 俺は、その子を励ました。 その子は、最初、弱々しく俺の乳へと吸い付いてきた。 「んぅっ!」 俺は、熱い体温を感じてびくっと体を強ばらせつつも子供をぎゅっと抱き寄せて離さなかった。 その子は、段々と力強く乳を吸いだして。 10分程乳を吸うと、その子供は、すっかり元気になっていた。 「ありがとうございます!」 親子は、俺に頭を下げて去っていった。 「お前、その乳は・・」 フェイスタさんが俺の子供に吸われて赤く腫れ上がった乳首を指差した。 「乳が出る者なんて、聖母様ぐらいしかきいたことがないぞ!」 「そ、それは・・」 俺は、あわてて胸を隠すと床に落ちていたシャツを羽織った。 フェイスタさんは、それ以上は俺に何もきかなかった。 でも、本当に大変なことになるのは、それからだったんだ。

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