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第90話 リヴァイアサン
8ー11 リヴァイアサン
俺は、久しぶりに学校の休日に神殿のグーリスじいちゃんのところに会いに行った。
グーリスじいちゃんは、喜んで俺を迎えてくれた。
「やってくれたのぅ、レンタロウ」
グーリスじいちゃんは、俺にお茶をすすめてくれた。
「こんなに早くに自立できるとは。お主には、全く、驚かされてばかりじゃわい」
俺は、マナ切れの病の薬としてポーションを作ったが、それの産み出す莫大な富の一部は、神殿へと送金していた。
もう、あんたたちの力は必要ないという意思表示だった。
それと。
世話になったことに対する感謝の気持ちだ。
「ところで、レンタロウ」
改まった様子でグーリスじいちゃんが俺に訊ねてきた。
「そろそろ夫君たちをお迎えしたのかな?」
はい?
俺は、グーリスじいちゃんをじっと見つめた。
グーリスじいちゃん、知ってんのか?
俺は、初染めの夜に5人の夫のうちの誰にも抱かれることはなかった。
だが、そのことは、俺たちだけの秘密だった筈だ。
「・・知ってたのか?」
「なんのことかな?」
グーリスじいちゃんは、とぼけた様子で俺を見つめた。
目が、笑っている。
俺は、溜め息をついた。
「・・まだ、誰も迎えてないし・・」
「そうか」
グーリスじいちゃんは、頷いただけだ。
俺は、拍子抜けしていた。
もっと、怒られるもんだと思っていたのだが。
「怒らないのか?」
俺がきくとグーリスじいちゃんは、聞き返してきた。
「なぜじゃ?」
「だって、俺、誰とも、まだ、寝てないし」
俺は、なぜか、涙が目尻に滲んでくるのを感じて焦っていた。
なんで?
だが、もう、止まらなかった。
気がつくと、俺は、グーリスじいちゃんにマナ切れの子供を助けた話や、乳をマナ切れの病の薬として売っていた話、アメリとイーサンにお仕置きされたことも話していた。
いつしか、涙が溢れてくるのを堪えられずに、俺は、泣いていた。
グーリスじいちゃんは、黙って俺の話をきいていたが、やがて、口を開いた。
「なぜ、この世界でマナ切れの病が起こるのかわかるか?レンタロウ」
俺は、じいちゃんの問いに頭を振った。
「世界の全てのマナは、量が変わることはない。このことは、学校で学んだじゃろ?レンタロウ」
「ああ」
俺は、頷いた。
「魔力量の不変の法則だろ?」
「うむ、そうじゃ」
グーリスじいちゃんがにっこりと微笑んだ。
「つまり、魔力量は、常に世界全体では、変化することがない。なのに、なぜ、マナ切れの病がおこるのか」
俺には、ぜんぜんわからなかった。
グーリスじいちゃんは、続けた。
「要するに、何者かがマナをよぶんに吸収しているということじゃ。そして、その何者かというのは、神子の・・アメリ様の封印するもの、リヴァイアサンなのじゃ。マナ切れの病が起こるということは、リヴァイアサンが目覚めかけているということなのじゃ」
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