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第92話 黙って抱かれろ!

9ー1 黙って抱かれろ! アメリのことをグーリスじいちゃんからきいた俺は、悩んでいた。 アメリのことを抱き締めていたい。 そして、なんでもアメリの願いを叶えてやりたい。 だけど。 俺は、アメリに自分の気持ちを伝えることができずにいた。 いまさら、どうやってその思いをアメリに伝えたらいいのかが、俺には、わからなかった。 今までさんざん拒んでおきながら、いきなり抱いてくれなんて、俺には、言えない。 俺は、悶々と悩み続けていた。 「どうしたんだ?レン」 「ルイス」 俺は、顔をあげるとルイスの方を見上げた。 ルイスは、ニヤリと笑うと俺の頬をそっと指先で撫でた。 「お前が、あんまり悩ましげな様子だから、クラスのみんなも落ち着かないじゃないか」 はい? 俺は、ぎょっとして辺りを見回した。 数人のクラスメートたちがさっと視線をそらした。 マジで? 俺、そんなに目立ってた? 「安心しろよ、レン」 ルイスがそっと囁いた。 「みんな、お前が元気がなくって心配してるだけだ」 「そうなの?」 俺の脳裏を以前のあの王立学園での出来事がよぎっていた。 あんなことは、もう起きないと思うけど。 俺は、ルイスが側にいてくれることにほっとしていた。 「だが、ほんとに、どうしたんだ?レン」 ルイスが俺の前の席に腰かけて俺を覗き込んだ。 「まるで、恋に身を焦がしているようなその憂い顔も魅力的だが、あまりフェロモンを巻き散らかされては、我々にとっても身に毒になる」 フェロモンですと? 俺は、ルイスを教室の外へと連れ出すと、思いきってアメリのことを相談してみることにした。 「あの、アメリのこと、なんだけど」 俺は、神子の運命とアメリのこれからについてルイスに話した。 ルイスは、黙って俺の話を聞いてくれた。 俺は、ルイスに話すうちに感極まって、涙目になっていた。 ルイスは、俺の肩を抱いて慰めてくれた。 「1人で悩んでいたんだな、レン」 「俺、どうしたらいいのか、わからなくって」 俺は、涙ぐんでいた。 「なぁ、ルイス。どうしたらいいと思う?」 「それを俺に相談するのか?」 ルイスは、自嘲気味な笑みを浮かべた。 「なかなか、お前もきついことをするな」 「ルイス?」 俺は、目をしばたいた。 「どうしたんだ?」 「いや」 ルイスは、溜め息をついた。 「レンは、アメリが好きなのか?」 「好きだよ」 俺は、答えた。 「だって、ずっと世話をみてきたし」 「なら、四の五の言わずに黙って、アメリに抱かれたらいい」 はい? 俺は、ぶわっと頬が火照ってくるのを隠せなかった。

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