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第111話 会いたい
10ー7 会いたい
「別に俺が救ったわけじゃないし」
俺は、長から目をそらした。
「俺は、ただ」
俺は。
いつだって、俺は、誰かを救おうとか思っていたわけじゃないし。
ただ、そのときそのときにできること、相手の望むことをやってきたというか、やられてきただけだし。
常に自分から誰かを救いたいとか思っているような成人君主じゃない。
「俺は、あんたたちの助けにはなれない。もとの場所に帰して欲しい」
俺は、長に頼んだ。
「頼む」
「そんなに簡単にはいかない。もう、船は大陸をはるかに離れてしまったんでな」
長は、深い溜め息を漏らした。
「それに、海竜が、怪物の御使いが目覚めている以上、今、世界のどこにも安全な場所はない。じきに、怪物が目覚めて暴れだす」
マジですか?
俺は、そこではっと気づいた。
怪物が目覚めるなら、アメリは?
アメリは、どうなるわけ?
「アメリ・・神子は、どうなるんだ?」
俺の問いに、長は、考え込んだ。
「神子のことか?神子は、恐らく、贄に出されることだろうな」
「贄?」
なんですと?
俺は、信じられない思いで長に訊ねた。
「神子は、リヴァイアサンを封印するだけなんじゃないのか?」
「ああ?」
長は、俺を見つめて真顔で答えた。
「神子は、リヴァイアサンを封印するが、そのためには神子自身の命と引き換えにしなくてはならん。ほとんど、生け贄のようなものだ」
マジで?
俺は、信じられない気持ちでいっぱいだった。
アメリが。
ほんとに、いなくなってしまうんだ。
このまま。
2度とアメリに会えなくなるなんて、俺は、嫌だ!
「アメリは・・神子のところに連れていってくれないか?頼む!連れていってくれるなら、俺にできることは、なんでもするから。今すぐ、アメリのところに連れていってくれ!」
「神子のもとに?」
長がなにやら興味深げに俺を見つめた。
「神子のもとに行ってどうするというんだ?1人の男も救えないあんたが、神子のもとに行って、何ができる?」
「それは・・」
俺は、唇を噛んだ。
確かに、俺が行ったってアメリを救うことはできないだろうけど、それでも、俺は、アメリのもとに行きたかった。
会いたい。
会って、抱き締めたい。
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