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第113話 お前は、俺の夫だ!

10ー9 お前は、俺の夫だ! 長は、俺を船の奥にある部屋へと導いた。 暗い、その部屋の中に長が俺に救って欲しいという人物がいるらしい。 だが。 俺は、頭を悩ませていた。 救うって。 いったい、どうすりゃいいわけ? 長は、その部屋の扉の前で立ち止まると、俺に向き合った。 「ここに、そのお方はいる。頼んだぞ、レンタロウ」 「お、おうっ!」 俺は頷くと、扉に手をかけた。 「誰だ?」 部屋の中から誰かの声がきこえた。 俺は、部屋に入っていくと、ぐるりと中を見回した。 異国の香りのする風変わりな室内は、いくつかの小さな灯りにうっすらと照らされていた。 部屋の中央に置かれている寝台の上に積み上げられたクッションを背にして1人の男が座っていた。 「何しに、来た?レンタロウ」 俺は、そいつに名を呼ばれて、びくっと体を固くした。 それは、俺を拐ってきた誰かの声だった。 俺は、暗い部屋の中で目を凝らした。 薄闇の中に浮かび上がるシルエットは、ハチミツ色の金髪に、翡翠色の瞳。 彼を俺は、よく知っていた。 「なんで?なんで、あんたが俺を?」 俺が問いかけると、男は、低い声で答えた。 「俺がお前を拐った理由は、1つだけだ。お前を手に入れたものが、世界を手に入れられる。だから、俺は、お前を拐った」 「嘘だ!だって、あんたは」 俺は、その男にきいた。 「俺のことを手にいれるために、こんなことをする必要は、なかった筈だろ?あんたは、俺の・・」 「俺の、なんだ?」 浮かび上がる影は、皮肉っぽく口許を歪めた。 「形だけの夫、か?」 「俺たちは、と、友達、じゃないか、そうだろ?」 俺は、影に呼び掛けた。 「そうだと言ってくれ、ルイス!」 「それは、俺の本当の名ではない」 ルイスは、俺に低い声で名乗りをあげた。 「俺の本当の名は、リーファス・オ・ライゼン。かつて、この世界の覇者として君臨した一族の末裔だ」 マジで? 俺は、ゆっくりとルイスの方へと歩み寄るとベッドの上のに上り、ルイスのもとへと這いよっていった。 「この世界の覇者?」 「ああ」 ルイスは、頷いた。 「かつて、この世界は、海の民も、大陸の民も、全てが、我がライゼン一族の支配下にあった。それを裏切り大陸の支配者と成り上がったのがリーゼンベルクだった」 「そうなんだ」 俺は、ルイスの投げ出された足元に座り込むと、彼を覗き込んだ。 酒の匂いが漂っている。 「酒なんか飲んでるのか?ルイス」 「だから」 ルイスは、イラついているようだった。 「俺は、ルイスじゃない。リーファス・オ・ライゼン。この世界の真の王となる者、だ!」 「どっちだって、俺には同じ、だ」 俺は、ルイスを見つめた。 「俺にとっては、あんたは、俺のために体を張ってくれた親友であり、そして・・」 俺は、ルイスに向かって囁いた。 「俺の・・夫、だ・・」 「夫、か」 ルイスは、鼻で笑った。 「無理するな。お前は、俺のことを愛していない」 「そんなこと、は・・ない」 俺は、ルイスに話した。 「俺は、お前が俺の夫の内の1人でよかったと思っている」 「嘘をつくな!」 ルイスが叫んだ。 「お前は、俺のことなんて」 「俺は!」 俺は、ルイスの腕の中へと飛び込むと奴に口づけた。 うぅっ。 自分からこんなことするの、初めてだぜ! 顔が火照ってきて、俺は、ルイスを直視することができなかった。 「これでも、嘘だっていうのか?」

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