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第120話 怪物
11ー4 怪物
「・・ん・・うっ・・」
俺は、低く呻いた。
冷たい手が俺の額に触れるのを、俺は、感じていた。
アメリ?
いや、ルイス?
誰?
俺は、ゆっくりと目を開いた。
「気がついたか?」
大きな岩だなの上に作られた固いベッドの上に俺は、横たわっていた。
側に見知らぬ黒髪の大男がいて、俺を見下ろしていた。
誰、だ?
この世界では珍しい黒髪のその男は、青白い肌をした中性的な雰囲気を持つ美しい男だった。
えっと・・
俺は、ぼんやりとした意識のまま、男にきいた。
「あんた、誰?」
「それは、私がききたい」
男は、俺にきいた。
「お前は、何者だ?」
俺は、だんだんと意識がはっきりしてきて。
俺、確か、死の海に落ちて。
ここは、どこなんだ?
俺は、辺りを見回した。
そこは、しんと冷えた洞窟の中ので、どうやら、俺の他には、この男しか人はいないようだった。
「ここは・・」
俺は、男に訊ねた。
「死後の世界?」
「そう思うのか?」
男が面白がるようにきいた。
俺は、がばっと起き上がると、叫んだ。
「アメリっ!」
「なんだ?それは」
男は、俺にきいた。
俺は。
何を言ったんだ?
「俺、俺・・」
あれ?
俺は、小首を傾げた。
俺、誰だっけ?
うん。
俺は、愕然とした。
何も、思い出せない。
誰か。
俺は、痛む頭を抱えて思い出そうとした。
誰かを探してここに、俺は、来た?
そして、海に落ちて。
だめだ・・
俺は、頭を振った。
何も思い出せない。
それから。
俺は、熱を出して、しばらく寝込んでしまった。
男は、見ず知らすの俺のことを優しく看病してくれた。
そして、俺は、ここが死の海の底であることや、ここが外から封じられた場所であること。男が、怪物と呼ばれていることなどを知った。
男は、俺の体を暖めるために俺を抱いた。
俺は、抵抗したんだが、体が言うことをきかなくって男にされるままになっていた。
やがて、俺が元気を取り戻してからも、俺たちは、一緒に眠った。
俺たちは、そこで共に暮らすようになっていた。
男には、名がなかった。
物心がついた頃から、男は、ここに1人で生きていたらしい。
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