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第121話 閉じ込められた世界で
11ー5 閉じられた世界で
『怪物』は、ずっと昔からここに1人で住んでいたのだという。
「時々、外から神子と名乗る者が来ることがあった」
『怪物』は、俺に話した。
「神子は、俺をここに閉じ込めるために来る。だが、神子は、大抵、俺の気にあてられてじきに死んでしまった」
『怪物』の住む洞窟の奥には、たくさんの神子の墓があった。
ここを訪れて死んでいった神子を『怪物』が葬っていたのだという。
「神子は、みな、よく似ていた。たぶん、同じ人間なのだと思っていた」
『怪物』は、語った。
「なぜ、その人間が来るのかは、わからない。だが、私は、どうやらその人間のためにここに閉じ込められているようだ」
『怪物』は、生まれてからこのかたずっと、ここに1人閉じ込められていたのだという。
「神子の他の人間を見たのは、お前が初めてだ」
マジか。
俺がここに来てしばらくして淀んでいた空気や、海の水がきれいになっていった。
なぜだかは、俺たちにもわからない。
まあ。
そんなことは、俺たちには、どうでもいいことだったんだがな。
『怪物』は、俺によくしてくれた。
食料をどこからか調達してきては、俺に分け与えてくれたし、俺が寒くないように暖めてもくれた。
かわりに俺は、『怪物』に抱かれた。
俺は、胸から乳が出て、『怪物』は、それを好んで飲んだ。
平穏な日々が続いていた。
そんな頃のことだ。
俺の腹がだんだんせり出してきた。
始め、俺は、太ったのかと思っていた。
だけど。
それは、違っていた。
俺は、俺の腹の中に別の生命が宿っていることに気づいた。
マジですか?
俺、男なんだけど?
パニクる俺を優しくなだめてくれたのは『怪物』だった。
落ち着くと、俺は、この命を産み育てることを決めた。
『怪物』は、俺を常に守ってくれた。
俺は、『怪物』にクメという名をつけた。
それは、昔の詩人の名前だった。
俺は、クメに話した。
「俺が昔いた世界では、クメは、レンタロウと一緒にいくつもの歌を作った」
俺がクメと暮らすようになって、洞窟の外の海は、きれいになり、魚や小さな魔物の類も住むようになった。
俺たちの食生活も潤っていった。
そうして。
数ヵ月が過ぎていき、俺は、三つ子を産んだ。
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