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第13話

 女性とは思えないものすごい力で暴れる彼女を完全に拘束すると九条が彼女の右足の裏に除霊符を貼った。 「いやあああああああ!」  それにつづいて、九条は額にカン、後頭部にマンの梵字を書き記すとこう唱えた。 「昔、霊山在り、法華と名付、今、西方にあり、弥陀と名付、濁世末代には観音と名付。三世の利益は同じく一体。  諸物は世を救うものなり、於いて大神通に往して、衆生悦びとなすが故に、無量の神力を表す」  そして数珠で美佐子の額を強く押した。 「ゔああああ!」  猛烈な獣臭の突風が吹き抜ける。次の瞬間、 「きゃーっ」 と「美佐子」の悲鳴が響き渡った。 「美佐子さんですね?」 神川先生が優しい調子で聞く。美佐子は手で胸と股の間を隠しながら、 「……は、はい……」 と答えた。除霊成功と判断した神川先生は俺と九条に離れの扉を開けさせると、 「除霊成功です。とりあえずタオルを持ってきていただいてよろしいでしょうか?」 「本当ですか!?ああ……」  膝をついた頼子を洋二が支える。使用人はタオルを取りに走り去っていった。

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