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第15話

 車に乗るなり、九条は「怪猫かあ、まあ俺にかかれば楽勝楽勝」と言いながらもう既に煙草をふかせている。こいつのこういう所作は虫唾が走るが運転に集中しようと思い、俺も煙草に火をつける。後部座席の神川先生も煙草を吸いながらシートベルトをした。  帰りの運転も俺、というか常に三人で行動するときは俺が運転をする。理由は九条も神川先生も運転がめちゃくちゃに荒いからだ。特に神川先生はある時から片目は義眼で、運転はできるものの涼しい顔で制限速度を無視した運転をするので生きた心地がしないし、九条は急加速急ブレーキが常習なので同様に任せられない。したがって俺が運転するしかなくなるのだ。俺も特別運転が丁寧な方ではないが、依頼先に向かう途中で警察に捕まるなんてまっぴらごめんだ。そんな俺の運転に九条は「のろい」「とろくさい」など文句を言うが、俺はいつも無視をして運転をしている。  九条はさらに近所のコンビニで缶チューハイとツマミを買って飲み始める。断固として自分が運転するつもりはないらしい。まあいつものことだ。九条は涼しげな目元と爽やかな顔立ちでスタイルの良い男だが、この性格のせいで女っ気は何一つない。

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