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第24話

 出世競争で相手を呪うのは古代からありふれた話ではある。昔々、藤原道長が建設中の法成寺を検分に出掛けた際、寺門で飼い犬が道長の服を咥えて放さなかった。それを見た安倍晴明がそこに道長を呪詛している蠱物が埋まっているはずであると告げた。そこを掘らせると土器を二つに合わせて紐で縛ったものが出てきたという。安倍晴明は懐から紙を取り出し、呪文と共に飛ばすと、それが飛んでいった先に道摩法師がいた。彼は左大臣藤原顕光に呪詛を頼まれたと白状したという……。  神川先生が言う。 「そうですか……今回は呪詛の状態がひどいので除霊は難しいのです。なので呪詛返しという方法を行います。呪詛返しは言葉の通り呪詛を相手に返す方法で、相手が何も対策していなければ、今の症状の何倍もの霊障が相手を襲います。それでもよろしいでしょうか」 「……はい、よろしくお願いします」  父親が苦々しい顔で言った。  別日に父親の兄弟も呼び、呪詛返しを行うこととなった。日時と大まかな段取りを伝え、くれぐれも気を強く持つように言ってからその日はK家を辞した。

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