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第32話

 もう一度呼び鈴を押す。ピンポーンと家中に響く呑気な音。依然として人の気配はない。O家のものと思しき車は数台駐まっているので出かけている可能性は低いのではないか?と話し合った俺達は万が一の可能性を考えて玄関の扉を開けてみることにした。玄関の扉は重々しく開き、中からは血の匂い。  家の中に入ると台所で母親が、リビングで父親と娘が殺されていた。遺体は心臓をひと突きされ、抵抗の後はない。確かここには大学生の息子もいたはずだが息子の部屋や他の部屋を探しても見つけることはできなかった。  神川先生は警察に連絡し、俺と九条は警察官が到着するまでに現場を検分することにした。遺体が仰向けに倒れていることから、母親も父親も正面から刺されているように思えた。娘だけはうつ伏せに倒れており、背後から刺されていると思われる。検死のプロではないので詳細はわからないが、父、母を刺した犯人が最後に娘を狙い、娘は異変に気付いて逃げ出すところを刺されたように感じた。

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