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第43話
まさかそんな深く聞かれるとは思わなかったので動揺した。
「はーん、いるのか」
「ぃ、ぃぇ……」
「おいおい俺とお前の仲じゃねえか」
その仲だから言えないんだって……。綺麗な顔を近づけてそんなことを言わないでほしい。神川先生の、俺と同じ煙草の匂いで何か変な錯覚をしそうになる。
「あれですよ、そういうの今はパワハラとかセクハラになりますよ」
「へいへーい、まあそう言う奴ができたら紹介してな」
「……わかりました」
多分一生紹介できないだろう。俺は神川先生に……告白とかできないだろうし、この十三年間培ってきた関係は今後も絶対に変わらないだろう。それは絶望でも希望でもある。現状維持は不幸であり幸福なのだ。
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