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第49話

「おはよう……どうした二人とも」  神川先生が来たときも俺たち二人は沈黙していた。大体一緒にいる時は小競り合いをしているのに珍しく静かな俺たちを見て神川先生が心配してくれる。 「榊、お前やっぱりそろそろキツいか?」 「いえ……でも仮眠が取れるとありがたいです」 「んじゃあ俺の前鬼・後鬼と矜羯羅童子・制託迦童子を向かわせっから、ちょっと待っててな」  神川先生が召喚の呪文を唱え、しばらくすると、 「到着したみたいだから、寝てていいぞ」 と言ってくれた。  俺は仮眠するためにソファに横になる。しかし寝なければと思うほどに昨日九条が言った言葉が頭の中をぐるぐると周り、寝付けそうにない。  過去の恋人、未練、そして九条の告白……  この十三年間ずっと神川先生を見てきた俺に、そんな事実を突きつけられても受け入れられるわけがない。ぐるぐる回る思考は睡眠を妨げるには十分だった。それはだんだんと怒りに変わっていった。連日の式神の使役で俺の精神はすり減り限界にきているのに、九条の奴なんでわざわざあのタイミングであんなことを言ったんだ。本当に本当に無神経極まりない。俺にしろ?誰がするか!

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