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第58話

 祓詞の儀は神川先生が行うこととなった。流石に神による穢れを払うのは九条には荷が重かったようだ。先生は持ってきていたお神酒と水で精進潔斎を済ませると、大幣を持ち大祓詞を唱え始めた。雨の中、びしょ濡れになりながら俺たちはその様子を見守る。 「高天原にかむづまり坐す皇が親神漏岐命……」  神川先生の揺るぎない声で祝詞が唱えられ始める。これで今度こそ夜刀の神の事件が終わる、と思ったその時、 「お前ら目を閉じろ!」  と神川先生の怒号が聞こえ、目を閉じた次の瞬間、   ざしゅ。  肉を引きちぎるような、音が聞こえた……。  俺は神川先生に言われた通り目を閉じていたので式神に尋ねる。 「……何が、あった……?」  恐怖を堪えて聴く。勾陳は、 「申し訳ありません、我々の確認が不十分だったため一体夜刀の神を見逃していたようです!」  と言った。それに対して九条が、 「それで、何があった!?」 「……神川先生の……首が……」  勾陳は言い淀んだ。 「首!?大丈夫なんだろうな!?」  九条の怒鳴り声が響く。 「申し訳ありません……もうお命は、絶望的かと存じます……」

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