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第70話
情事が終わった後、二人でタバコを吸う。
「あーあ、傷心のお前につけ込むことだけはしないつもりだったんだけどな……」
九条が後悔したような口調で言う。
「思いっきりつけこんでんじゃねーか」
「俺ァ俺で悲しいっつーか慰めて欲しかったんだよ。俺も十年、先生と一緒だったからな」
九条は十年、俺は十三年、先生に師事していた。長年年尊敬し、目指していた人が亡くなったのは九条も同じなのだ。そこに恋愛感情がなかっただけで。
「十三年か……長かったけどこっから先年取ったら十三年なんて一瞬の出来事に感じるようになんのかな」
「さーな……でも確実に俺らは先生と一緒にいたんだよ、それは変わんねえ」
不覚にも九条の言葉に助けられる自分がいた。俺らが先生と過ごした年月は無くならない。そう言ってくれる存在がいて、救われた。
季節は夏になり、先生の四十九日はあっという間に過ぎた。俺たちはその間ずっとどっちが新しい所長になるかでずっと揉めていた。最終的に俺が所長を継ぐことになり、関係各所に挨拶回りをしていった。
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