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第72話
いつも通りに会計をして、待っていた九条に「お待たせ」という。九条の家へ行くときの酒とつまみ代は九条持ちなのでお互い様だ。このシステムもいつの間にか出来上がっていた。
俺の家へ帰る道すがら、妙に肩が重かった。確かに醤油と味醂は重いのだが、それにしても妙だ。ふと自分の肩を見ると二十代位の男の生き霊がついていた。九条にも「お前肩になんかついてんぞ」と言われる。このくらいの生き霊ならば俺でも払えるので短く祓詞を唱え息を吹きかけると霧消していった。
「なんだったんだ?今の」
「俺が知るかよ。見たことの無いやつだったし……一体誰なんだ?」
生き霊を飛ばされる思い当たりも、憑いていた生き霊の顔に見覚えもなかった。生き霊は強い感情を抱いている相手のところに無意識あるいは意識的に飛ばすものだ。顔も見たことのないやつにそんな感情を抱かれる覚えはない。
「ストーカー予備軍とかじゃねえの?気をつけろよ」
「ああ」
そんな会話をしながら家路に着く。
心なしか家のポストや玄関の施錠に気を配りながら部屋に入った。部屋は外部からの侵入の形跡はない。
「しばらく家に式神置いといたらどうだ?」
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