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第81話

 他人の結界の中であろうとも式神を召喚するのは俺にとっては造作もないはず、だが先ほどからの動悸で精神の集中が乱れ、式神を召喚できずにいる。  つまり……この状況は非常にまずい。まさか薬を盛ってくるようなやつだとは思わなかった。式神を召喚できないとなると自力で逃げ出す他はないが、手足は拘束されているし俺は縄抜けなんて出来ない……。 「さあ、これからいつもあの男としていることよりも気持ちいいことをしようね」  そう言いながら男は俺の服をはだけさせていく。  どうしよう……一生懸命に式神を召喚しようとするが十二天将程の能力のある式神は精神を集中しないと呼べないし、下位の式神を呼んでもこの状況を打破できるとは思えない。絶体絶命だ。  俺は結界を破れるギリギリの強さの式神を召喚することにした。それくらいなら今の精神状態でもなんとかできる……!  式神を召喚すると男は、 「すごい、この結界の中式神を召喚するなんて……!でもどうするつもりだい?あの男に助けでも呼ぶつもりかな?」 「ご名答……、っ」  式神を飛ばしたあたりで思いっきり頬を打たれた。口の中を切ってしまい、口腔内に血の味が広がる。

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