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第95話

「その点ご了承いただければと思います。到着し次第契約書へのサインをお願いいたします」  神川先生からはこの「コトリバコ」については行方不明となったときに責任の所在を曖昧にするなと厳に言われていたので、どんなに急いでいても契約書は事前に交わす。  A家に到着した俺たちは早急に契約書を作成し終えると、例の蔵へ向かった。先行していた六合と玄武と合流し、進捗を共有する。六合と玄武ではどうやら呪物の移動した痕跡は掴めなかったらしい。まあアレを使おうとするのであれば相応の呪術への知識があるだろうから、痕跡を消す呪をしながら持ち去ったのだろう。  例の箱が保管してあった蔵はじめじめとしていてわずかながら血の匂いがする。古い血の匂いなのできっと例の箱から漏れ出た血の匂いが蔵に染み付いているのだろう。蔵の奥、例の箱を置いていたという場所は金庫で施錠されていたが開けられた痕跡があった。  そもそも例の箱自体に封印術はかけられていない。保管の目的が中のものの呪力の逓減なので、封印術をかけてしまうと中身の呪力が逓減されないからだ。そこで金庫に保管していたようだが物理的に破られてしまっている。

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