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まだ少し肌寒い日が続く4月。花びらが舞い散る早咲き桜の並木道を道路いっぱいに広がって歩く。そんな見た目もチャラい、はた迷惑な集団の真ん中に俺はいる。
俺たちの表向きは軽音楽部に所属している部員ということになるが、活動らしい活動は全くしていない。新入生歓迎会と称した催しで即席バンドを組んで一曲だけのライブを敢行したが、それは傍 から見ても決していいライブではなかった。結果、
「それにしても二年連続で新入部員がゼロとかやばくね?」
「うーん」
「みんなさ。部活で強制的にやらされるより、好きなやつとバンド組んでプライベートで好き勝手やってるほうがいいんじゃね?」
「確かにな。部活動で真面目に音楽やるとか超ウケるし」
「言える」
部員は三年生の俺たち5人だけだ。人数的にはなんとか廃部だけは免 れたが、来年には間違いなくクラブ創設30年の輝かしい歴史に幕を下ろすだろう。
「ところでサンバ・スターズの新曲聞いた?」
「聞いた聞いた!」
「あれ超やばくね?」
一応は音楽、ロック好きな俺たちの話題は音楽の話が中心で、
「でもあの見た目はないなあ」
「言える」
「あのデブ眼鏡、音楽やってなかったら間違いなくオタクかお笑い芸人だよな」
それでも、俺が望んだようなディープな話はできそうになかった。
俺が東校の軽音楽部にこだわってきたのには理由 がある。俺の親父はジャズドラマーで、今は夜間はバーとして営業している喫茶店のマスターをやっている。
その親父が高校生の頃に同好の勇士らと立ち上げたのが東校の軽音楽部で、東校の軽音楽部と言えばひと昔前までは、バンドをやっている道内の高校生たちの憧れの的だったのだ。
「とうちゃーく」
「萌衣たち来てる?」
そんな親父に強い憧れと尊敬の念を抱いている俺は、小学生の頃から東校の軽音楽部にも強く憧れていて、
「まだみたい」
その頃から高校生になったら東校に入学して、軽音楽部に入部すると決めていた。
「どうする? 先に行っとく?」
「萌衣たちには部屋番を送っとけばいいんじゃね?」
だがしかし、言ってみればその頃が全盛期で、今では顧問の監督のもと真剣にバンド活動をするのも流行らないようで、いざ入部してみると俺の思惑とは全く違っていた。
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