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憧れや尊敬がますます強くなる。話せば話すほどKに強く惹かれていく。そんな俺を変なやつだと思っているのかどうだか、さっきからずっとKは笑いっぱなしだ。
「それさ。新しいお洒落?」
それから、俺の顔。特に上ら辺を見ながら、そんなことを言ってくる。
「へ?」
次の瞬間、罰ゲームで前髪をちょんまげに結っていたことを思い出した。
「あ!」
うわー、やっちゃったよ。俺ってば!
「これはその、好きでやってるんじゃなくて。罰ゲームで仕方なく……」
慌てて弁解する俺にKはひとしきり笑って、
「柴田は案外、普通なのな」
再びアコギを抱えながら、そんなことを言ってくる。
「安心した。ただチャラいだけじゃなくて」
なんて何気に酷いことを言われてるのに、とてつもなく嬉しいんだけど。なんて言うのかな。こうやって知り合ったKにもっと近づきたくて、Kをもっと知りたくて。
そんな馬鹿なことを考えていたら、
「なあ、柴田。おまえのこと、弓弦って呼んでいい?」
ギターから顔を上げたKにそんなことを言われた。
「あ、うん。もちろん!」
「さんきゅ。それからさ。弓弦が呼んでる『ケイ』って、ドロップ・アウトの『K』だよな?」
続けてそんなことを言われたけど、おバカな俺にはKが言ったその意味が理解できなくて。
「学校とかバンド以外ではさ。本名の海月慧の『慧』で呼んでくれねえ?」
それからKは『訳わかんないけどさ』と続けながら照れ笑った。
その日は結局、昼休みをそうやって二人で過ごした。音楽の話をしてみると思いの外、気が合って驚いた。洋楽、邦楽ともに好きなバンドはほぼ一緒だし、音楽に関する考え方なんかもよく似ていて、K……、じゃないな。慧と話すのはとても楽しかった。
慧と話をしていると、慧は俺と同じ高校生なんだってことを今更ながらに実感する。等身大の慧に触れるたび、慧を知るたび、強く強く惹かれていく。
その気持ちに特別な意味があることに、その時の俺が気付くことはなかった。
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