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多分、高橋たちとは立ち位置が違ってしまったんだろう。横一列に並んで立ったスタートラインは同じだったはずなのに。
今、俺が立っている場所は夢へと続く道の本当のスタートラインで、軽音のメンバーと立っていたのは単なるバンド好きが集まる場所の目印に過ぎなかった。慧と朗さんと立った本当のスタートラインをしっかりと踏み締めた今は、スタートの合図をただひたすら待っている。
みんなに知られないように、そっと小さな溜め息をついて見上げた空。幾重にも走る飛行機雲が、つかの間の晴れ間を実感させた。
「じゃあな。柴田」
「今から練習だろ。がんばれよ」
「ん。さんきゅ」
「海月とシンさんに、またカラオケ行こうって伝えといて」
「また明日な」
阿部、坂東、千葉(友達A、B、C)。そして高橋の4人と別れて校門を出る。基本的に別行動をしている慧とは、一緒に下校したことがない。
「ちょっと遅くなったかな」
今日は朗さんの美容院が休みの日で、週一のこの日だけは俺も慧もバイト先に休みをもらっている。この日だけは夕方の5時すぎから練習ができるから、帰宅する足が自然と早足になる。
別にここまで徹底しなくてもいいかもって、最近、特に思い始めた。慧も俺もバイトがない時は、別に一緒に帰って練習してもいいんじゃないのかと。
それに、よくよく考えれば現地集合でも全く問題はなくて、わざわざ学校で待ち合わせてまで一緒に帰ることもない。
「…………」
そもそも学校では毎日、昼休みに屋上で顔を合わせている。バンドの練習やらなんやらで放課後も毎日、俺んちで慧とは会っているんだし。
そう。慧とは毎日会っていた。朗さんはともかく、慧とは学校の屋上に行けば必ず会える。なのになんで、早く会いたいってそう思うんだろう。そんな自分の気持ちに戸惑った。
半ば駆け出すように早足で帰るいつもの通学路。早く慧の顔が見たいと気ばかりが焦る。少しずつ膨らんできたその思いに、この時の俺はまだ気づかずにいた。
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