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Chapter 4 ... SEX,SCHOOL,ROCK'N'ROLL
翌朝。俺は結局、ほとんど眠らずに朝を迎えた。
「……あー……」
一応、軽い睡眠は取れたが、本当に浅い眠りだった。
「………」
だけど、そんな時に限っていい夢を見たりするんだよな。
「……あれ?」
なのに、その夢の内容を覚えてないとか。なんだか物凄く勿体ないことをした気がする。
しばらくベッドから半身だけを起こした状態でいて、
「いよいよ、か」
いくらか頭が冴えてきたところで、人ごとのようにそう呟いてみる。そうすることで今日が自分にとってどんな日なのか、よりいっそう実感することができた。
いつものように身支度を調えるために、いつもより少しだけ気合いを入れつつベッドから起き上がった。
まるで遠足前の子供のように、枕元にドラムスティックを置いて眠ってしまった。そんな自分に思わず苦笑う。
「……こほん」
軽く声が出るようなわざとらしい咳ばらいを一つして、取りあえずはパジャマ代わりのジャージを脱いで部屋着に着替えた。
緊張感が沸く以前に、高揚感のほうが強くて落ち着いていられない。だけど、そわそわと落ち着かない自分を持て余すというよりは、それを楽しむ余裕もある。
それというのも今日という日を待ち侘びていたからで、そんな自分を可愛く思えた。遠足で言うリュックサックにあたるドラムスティックに手を伸ばして、二本束ねた両端を持ち、ストレッチをしてみる。
「んーっ」
軽く伸び上がって背筋を伸ばせば、ことさら実感が沸いてきた。
やれるだけのことはやった。今日、この日のために。
俺の中ではSSRはもう始動しているけど、ファンの人たちにとっては、今日はSSRが始動する日。
言ってみればSSRの誕生日だ。それと同時に、ドロップ・アウトが完全に終わる日でもある。
「……ファン」
今まで俺は活動らしい活動をしていたバンドに所属したことはなく、バンド関連で自分にファンがついたことはなかった。そんな俺がいきなり大勢のファンを抱えるバンドメンバーである事実に、身が引き締まる思いがする。
SSRは、ドロップ・アウトのファンクラブをそのまま引き継いでいる。そのファンクラブの会員だった俺がこっち側にいる。それがまた信じられなくて。
しばらくボーッとした後に軽く頭を振り、雑念を振り払ってから部屋を出た。
結局は記念すべきSSRのファーストライブは表向きはファンクラブ限定で、いわゆる鳴り物入りでと言うわけにはいかない。それでも道内のインディーズ業界では注目されていて、間違いなくSSRはこれからの業界を賑わせることになるだろう。
その裏では高橋をはじめ、俺たちを支えてくれた仲間もライブに招待していた。ファンの間でもファーストライブのチケットは貴重なもので、どうやら初ライブのチケットはプラチナチケットになっているようだ。
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