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第3話

 王子ともなれば、通常であれば遊んでいる暇などはないと言われるところだ。王となるために学ぶべきことは山ほどある。しかし父王は、その点に関しては寛容なのだろうか。アンドレイとしても図りかねる。 「私めの倅で宜しければ、ぜひともお相手をさせていただきたく存じます」  フィリップは、願ってもないとでも言いたげに腰を折った。 「そうか。ルイとやらも、そなたに王子を任せても良いか?」  父王にそう問われると、ルイはアンドレイの顔をじっと見つめてから、キリっとした顔付きで「はい。お任せください、王様」と言った。そして、アンドレイの手を取り、膝を付く。 「よろしくお願いいたします、アンドレイ様」  十一歳にしては色香のある微笑みを向けられると、ルイから目が離せなくなった。 「こ、こちらこそ」  何故か知らないが、友ができてしまった。友というのは自然になるものではないのかとも思うが、こうなっては仕方がない。 いきなり、遊び友達だなどと言われると大いに困惑してしまう。 『何故にこの様なことを?突然友と言われましても困ります』  本当は、父王にそう言いたかった。 それでも、逆らうことなどできず……。 その後に、アンドレイとルイは二人で宮中にある庭園を訪れた。 父王が二人に行ってみてはどうかと提案したのだ。 庭園は宮殿の中央に位置し、アンドレイ達王族の住む城と家臣らなどの住まいの建物に囲まれている。 噴水もあり、宮中にいる者たちを和ませている。その他にも、薔薇なども植えられていて宮中で働く女官たちの憩いの場となっている。 「王子様は、こちらへは良く来られるのですか?」  アンドレイより五センチほど背の高い、ルイが尋ねた。 「いや、あまり来ることはないが……そなたは、どうなんだ?」 「私は初めて参りました。私は普段、ここから離れたところに住んでおりますゆえ……」 「そうなのか?」 「はい。ずっと、父のみが宮中で暮らしておりましたが、この度、私や母も宮中で暮らすことになりました」  これまで、ルイはあまり宮殿を訪れることはなかったのだが、今日初めて父親に連れられて宮殿にやってきたのだという。 「そうであったか」 「はい。見るもの全てが新鮮で、楽しいです」  自分にとっては、なんてことない“我が家”に過ぎないが、宮廷の外で過ごしてきたルイにとっては別世界のように映るのかもしれない。

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