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第4話

 アンドレイには良く分からないが、もし自分が宮殿の外に出たらどう思うのだろうかと思う。 「反対に、私はここから出たことがない」 「街中も、色々と楽しいですよ。王子様もいつかおいでになってみてください」 「そうだな。機会があったらな」  今のところ、自分はほとんど閉じこもっているだけで、外の世界を知らない。そんな自分が街中に出ていっても、平気だろうかという怖さもある。 それに、そんな機会が訪れるかどうかも、分からない。 アンドレイは、どこかあり得ないという気持ちを抱きつつ、返事をした。 「きっと、ありますよ」  柔らかくルイが微笑む。そして彼は薔薇の咲く方に目をやった。 「王子様は、この薔薇の様に美しいですね」  ルイが、傍らの薔薇に触れて突然言った。 何てことのない様に言うので、アンドレイは面を喰らう。 「なっ、何を申すのだ!可笑しなことを申すでない」 「私は、本当のことを申し上げただけです。王子様は綺麗です」 ルイは、そう臆面もなく言った。そして、アンドレイに暗示をかけるように見つめてくる。 「その様なことを申すのは、そなたくらいのものだ」  まだ子どもだし、そんなことを言われるとは思いもしなかった。 ルイの審美眼も怪しいものだ。 しかし、アンドレイは顔を赤くした。  幼少期より、可愛いなどと言われ育ったが、美しいとか綺麗などと言われたのは初めてだ。 「左様ですか?私は、あなたの様な方に初めて出会いました」 「そ、それは、世の中の様々な人を知らないからではないか?」  ルイの方が年上だし、見聞は広いのではないか。容姿端麗な人間は他にもいるのではないだろうか。 「確かに、綺麗な人は多くいるでしょう。けど、私にとっては貴方様が以外にはいません」 「ま、まだ出会ったばかりではないか」  アンドレイは顔を真っ赤にした。なぜ、初対面の少年にドギマギさせられなければならないのだろう。 「そ、それに、私は男だぞ?」 「関係ありません。私が思ったことを申し上げたまでです」 「へ、変なヤツだな」  アンドレイは妙にむず痒い気持ちになった。 「何とでも」  ルイは、ニコリと微笑んだ。アンドレイには、ルイの考えていることがさっぱり分からない。そもそも、王子に向かって初対面で「美しい」などとのたまうのは、礼を欠いているのではないかとも思う。  アンドレイは、それでもルイを突き放せない。

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