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第5話

それから、ルイはアンドレイの心にどんどんと入り込んでいく。  次の日の午後に、ルイはアンドレイの居室にやってきたのだ。 ルイの居室は宮殿の二階にある。十帖間が二つある作りで広々としていて、開放的な出窓からは宮殿の外を行き交う人々の様子が見える。  アンドレイが生まれた頃から宮廷の側用人をしている、トムがルイの来訪を告げるためにアンドレイの部屋に入ってきた。 「アンドレイ様、ルイと申す者が参っております」 「ルイ……?」 「はい。左様で」  思わず、アンドレイはルイとは誰だろうと思ってしまった。 しかしすぐに、昨日出会った少年を思い出す。 『早速、もう来たか』  そう思ったが、招き入れることにした。 「分かった。通してくれ」  指示すると、トムは「承知いたしました」と一礼して下がっていった。  そして間もなく、コツコツコツというノックの音と共に「ルイです」という声が聞こえた。 「入れ」  そう言うと、荷物を抱えたルイがドアを開け現れた。 「王子様、不躾ながら気になったもので来てしまいました」 「……もう来たのだな」 「はい、王子様。早めの方が良いかと思いまして」  その理屈がアンドレイには良く分からない。しかし、あまり気にしないことにした。 「まぁ良い。取り敢えず、そこに座れ」  アンドレイは、部屋の中央に備えられているテーブルセットを指した。 「あ、はい。ありがとうございます」  恐縮したように頭を下げ、ルイはテーブルの椅子を引いて座った。 アンドレイも席に着くと、トムがホットミルクを二人分持って戻ってきた。  ここは雪こそ降らない土地だが、今は冬なので寒い。冷えた身にはありがたい。 「先に飲め」  アンドレイが促すと、ルイは戸惑いを見せた。 「よろしいのでしょうか」 「あぁ。そなたは客人であろう」 「はぁ。それはそうですね。では、いただきます」  ルイは一口啜り、カップをテーブルに置いた。 「美味しいです。それに、凄く温まりますね」 「そうか。それは良かった」  アンドレイもカップに口を付けた。

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