5 / 82
第5話
それから、ルイはアンドレイの心にどんどんと入り込んでいく。
次の日の午後に、ルイはアンドレイの居室にやってきたのだ。
ルイの居室は宮殿の二階にある。十帖間が二つある作りで広々としていて、開放的な出窓からは宮殿の外を行き交う人々の様子が見える。
アンドレイが生まれた頃から宮廷の側用人をしている、トムがルイの来訪を告げるためにアンドレイの部屋に入ってきた。
「アンドレイ様、ルイと申す者が参っております」
「ルイ……?」
「はい。左様で」
思わず、アンドレイはルイとは誰だろうと思ってしまった。
しかしすぐに、昨日出会った少年を思い出す。
『早速、もう来たか』
そう思ったが、招き入れることにした。
「分かった。通してくれ」
指示すると、トムは「承知いたしました」と一礼して下がっていった。
そして間もなく、コツコツコツというノックの音と共に「ルイです」という声が聞こえた。
「入れ」
そう言うと、荷物を抱えたルイがドアを開け現れた。
「王子様、不躾ながら気になったもので来てしまいました」
「……もう来たのだな」
「はい、王子様。早めの方が良いかと思いまして」
その理屈がアンドレイには良く分からない。しかし、あまり気にしないことにした。
「まぁ良い。取り敢えず、そこに座れ」
アンドレイは、部屋の中央に備えられているテーブルセットを指した。
「あ、はい。ありがとうございます」
恐縮したように頭を下げ、ルイはテーブルの椅子を引いて座った。
アンドレイも席に着くと、トムがホットミルクを二人分持って戻ってきた。
ここは雪こそ降らない土地だが、今は冬なので寒い。冷えた身にはありがたい。
「先に飲め」
アンドレイが促すと、ルイは戸惑いを見せた。
「よろしいのでしょうか」
「あぁ。そなたは客人であろう」
「はぁ。それはそうですね。では、いただきます」
ルイは一口啜り、カップをテーブルに置いた。
「美味しいです。それに、凄く温まりますね」
「そうか。それは良かった」
アンドレイもカップに口を付けた。
ともだちにシェアしよう!