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第7話
ルイは、特別何かがない限り頻繁にアンドレイの元を訪れるようになった。
その日、侍女が別の用により午後までアンドレイの部屋の掃除がされていなかった。
アンドレイも、午前中から父王と共に出掛けており、部屋を空けていた。
アンドレイが部屋に戻ったのは午後二時頃。
自分でも部屋を片付けておこうと思っても、やっている余裕がなかった。散らかった自室を呆然と眺め、王子としてこれでは失格だなと思う。
すると、以前にリカルドから『民にも恥ずかしい』という言葉を思い出した。
『確かに、そうだよな』
そう思いながら、アンドレイはため息を吐いた。今からでも、自分で何とかしようか。
そんなことを考えているとドアがノックされたので、アンドレイは側用人のトムが来たのだと思った。この時間に来るとしたら、トムしかいないだろう。
「トムか?入れ」
当たり前のようにアンドレイが言うとガチャっとドアが開いたので、顔を向けるとそこに立っていたのはルイだった。
「ル、ルイではないか」
「王子様、こんにちは!」
「こんにちは、ではない!」
ルイの思わぬタイミングでの登場に、アンドレイは大いに焦る。部屋が散らかっていたから。
「今日は、講義が早く終わったので、今の時刻となりました。王子様がいらして良かったです」
「そ、そうか……」
「驚かせようと思い、使用人の方には私がやってきたことを王子様に言わないようにお願いしたのです」
「それでトムは来なかったのか」
トムがルイの来訪を知らせに来なかった理由が分かった。
「しかし……」
ルイは何かに気付いたように、室内に視線を走らせた。
「ん?」
ルイの視線を辿ると、そこには服などが散らかっている現場が広がっている。思わず、アンドレイは冷や汗をかきそうになった。そうだ。部屋が片付いていなかった。
「どう、したのですか?この部屋は……」
ルイは意外そうに目を丸くしている。
「いつも、綺麗になさっているではありませんか」
「い、いつもは、侍女が片付けてくれているのだ。けれど、今日は侍女がおらず私も片付けている暇がなかったのだ。これから、片付けようと思っていたところに、そなたが来たから……」
アンドレイが語尾を口ごもると、ルイはため息を吐いた。
「つまり、日常的に侍女に片付けや掃除をしてもらっていると?」
「そ、そうだ。王子なのだからそのくらい当然ではないか」
つい、感情のままに言ってしまった。
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