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第8話
「確かに、王子様であれば身の回りのお世話はしてもらっているのでしょう。しかし、ご本人がだらしない様子では、王となられた時に威厳がなくなってしまいます」
ルイは年齢の割に大人びた物言いをする。親や英学堂で躾けられたのだろうか。
「ふ、二つ年上だというだけであろうに、説教するのか」
「説教などとは、滅相もございません。心配しているのです。王子様を」
「私を?」
「はい。いずれ、立派な王をなっていただきたいので」
そんなことを言われて、アンドレイは顔を赤くした。これは、ルイの本心だろう。期待をかけてくれていることは、素直に嬉しい。
「あと……私は片付けのできない方は嫌いです」
喜んだと思ったら、今度は急降下だ。ルイの言葉がグサリと刺さる。何故か、思ったより心に堪えた。
「そ、そこまで言うことはないだろう。私だってやればできる!」
半ばムキになり、アンドレイは反論した。何となく、悔しかったのだ。
このままではいけないと感じた。表に出ない面でも、民に恥じない王にいずれなりたいと、子どもながらに決意した。
「では、私と共にお片付けしていただけますか?」
そう問われると、自分は何をやっているのだろうかと恥ずかしくなってくる。しかし、何とかこの状況を脱却するためにも、片付けをしなければいけない。
「わ、わかった。そうする」
そう返すと、ルイは微笑んで「了解いたしました」と言った。
「さぁ、早速始めましょう」
「うむ……しかし、何から始めれば……」
「まず、服を片付けましょうか。洗うものなどを纏めましょう」
「なるほど……分かった」
アンドレイは、散らばっている服たちを集め始めた。そして、洗う物は別途纏める。それ以外はきちんと畳み衣装部屋に戻した。
続けて、物の片付けだ。
アンドレイは本を読むのが好きで、机に本が積まれている。
それだけでなく、長椅子に横になり読むのがとりわけ好きだ。なので、長椅子にも本が無造作に置かれている。
「本が目に付きますね。本を片付けましょう」
ルイが指示すると、アンドレイは本を一冊手に取った。
「物を使ったなら、直ぐに元の場所へと戻せば良いのです。そうすれば散らかる余地もございませんよ」
「確かにな」
「本なら、読み終えたなら直ぐに本棚へと戻せば良いだけです。単純なことですよ」
何だか、友達というよりも仕えている者か師匠のように感じられる。
アンドレイは、人任せにせずに自分で片付けるようにしようと誓った。ルイに嫌われたくないから。
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