8 / 82

第8話

「確かに、王子様であれば身の回りのお世話はしてもらっているのでしょう。しかし、ご本人がだらしない様子では、王となられた時に威厳がなくなってしまいます」  ルイは年齢の割に大人びた物言いをする。親や英学堂で躾けられたのだろうか。 「ふ、二つ年上だというだけであろうに、説教するのか」 「説教などとは、滅相もございません。心配しているのです。王子様を」 「私を?」 「はい。いずれ、立派な王をなっていただきたいので」  そんなことを言われて、アンドレイは顔を赤くした。これは、ルイの本心だろう。期待をかけてくれていることは、素直に嬉しい。 「あと……私は片付けのできない方は嫌いです」  喜んだと思ったら、今度は急降下だ。ルイの言葉がグサリと刺さる。何故か、思ったより心に堪えた。 「そ、そこまで言うことはないだろう。私だってやればできる!」  半ばムキになり、アンドレイは反論した。何となく、悔しかったのだ。 このままではいけないと感じた。表に出ない面でも、民に恥じない王にいずれなりたいと、子どもながらに決意した。 「では、私と共にお片付けしていただけますか?」  そう問われると、自分は何をやっているのだろうかと恥ずかしくなってくる。しかし、何とかこの状況を脱却するためにも、片付けをしなければいけない。 「わ、わかった。そうする」  そう返すと、ルイは微笑んで「了解いたしました」と言った。 「さぁ、早速始めましょう」 「うむ……しかし、何から始めれば……」 「まず、服を片付けましょうか。洗うものなどを纏めましょう」 「なるほど……分かった」  アンドレイは、散らばっている服たちを集め始めた。そして、洗う物は別途纏める。それ以外はきちんと畳み衣装部屋に戻した。  続けて、物の片付けだ。 アンドレイは本を読むのが好きで、机に本が積まれている。 それだけでなく、長椅子に横になり読むのがとりわけ好きだ。なので、長椅子にも本が無造作に置かれている。 「本が目に付きますね。本を片付けましょう」  ルイが指示すると、アンドレイは本を一冊手に取った。 「物を使ったなら、直ぐに元の場所へと戻せば良いのです。そうすれば散らかる余地もございませんよ」 「確かにな」 「本なら、読み終えたなら直ぐに本棚へと戻せば良いだけです。単純なことですよ」  何だか、友達というよりも仕えている者か師匠のように感じられる。  アンドレイは、人任せにせずに自分で片付けるようにしようと誓った。ルイに嫌われたくないから。

ともだちにシェアしよう!