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第26話

後日されたルイの報告によると、使途不明金は武器を購入するという名目で使用された金だったが、実際に武器が購入された実態がないことが判明したという。 「なんだと!?」 「係りの者も、武器を購入したと考えていたとかで、さして確認もしなかったようです」 「なんとずさんな……官吏たちは一体何をやっているのだ。これで宮廷の仕事が務まるというのか……」  アンドレイは憤りを隠せない。ルイの報告を聞いていると、はらわたが煮えくり返りそうだ。 「全くです。それだけでなく、武器を購入するとして金をどこかへ持ち去った人物も判明しました」  ルイがいうと、アンドレイは目を見開いた。一体、誰が犯人だというのか。 「一体、誰がやったというのだ」  緊張の面持ちでルイの答えを待つ。この一瞬も長く感じられてしまう。 「言いにくいのですが……」 「……いいから、申せ」  アンドレイは覚悟を決めた。最悪のことも想定して。 「軍事部の……長をされているリカルド様です」  時が止まったような感覚に陥った。今聞いたことが、何かの間違いであって欲しい。そう強く神に祈った。 「い、いや、そんなはずはない。リカルド殿が……師匠がさようなことをするはずなど……」  心の奥で覚悟はしていたが、本当にそうだとは……。アンドレイは放心状態になってしまう。 「王子様、大丈夫ですか?」  肩を揺すられ、アンドレイは意識を集中させた。 「あ、あぁ……すまぬ。それで、師匠が犯人というのは本当なのか?」  まだ、信じがたい自分がいる。幼い頃からいつも傍にいて、多くのことを教えてくれたリカルド。彼への恩義をアンドレイは忘れていない。  しかし、時が経ちこの様なことになるとは思いもしなかった。 「はい……。残念ながら、隈なく調べましたところ間違いありませんでした」 「なぜ、この様なことを……」  ルイが持ってきた証拠の書類に目を通し、アンドレイは机上で頭を抱えてしまう。 「それで……消えた金は何処に行ったのだ」 「リカルド様の、隠し財産として蓄えられていました。関わった者は口止めをされておりましたが、証言を得ました。証拠となる書状も見つかっております」 「そうか……分かった」  今日は、これ以上は聞く気にはなれなかった。 「師匠を呼んで、事情を聞かなくてはいけないな……」 「そうですね」  ルイが、アンドレイを切なげに見つめていた。

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