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第29話
「王子様、報告がございます」
数日後、ルイがアンドレイの部屋へと神妙な面持ちでやってきた。
「どうした」
一瞬にして、アンドレイの気持ちは言い知れぬ不安に包まれた。嫌な予感がしたのだ。
「はい……先日襲ってきた刺客を送ったのが、リカルド様だと判明いたしました」
ルイもやりきれないような、残念そうな顔をした。
「なんだと?」
嫌な予感が、的中してしまった。
何故アンドレイに刺客を送ったのだろう。使途不明金のことが関係しているのだろうか。
「ルイ。これから師匠のところに行く。着いてきてくれ」
「え、大丈夫なのですか?」
「身の危険性か?案ずるな。私も十分に注意する。それに……」
「それに?」
「そなたがいるから大丈夫だ」
少し顔を赤らめながらアンドレイが言う。
「私は、王子様にお怪我をさせてしまいましたが……」
「そなたは、側にいてくれるだけで心強い」
アンドレイが呟くと、ルイは目を見開いた。
「もったいないお言葉です、王子様」
ルイはアンドレイの額にキスを落とした。思わずアンドレイは額に手を当てて赤面してしまう。
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