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第32話

  ルイと歩いていると、ふと視線を感じたためアンドレイはそちらに目を向ける。  視線の先では、木陰からこっそりとこちらを見つめる少女がいた。歳の頃は十八歳か十九歳くらいだろうか。 服装からして、宮中に仕える侍女のようだ。 アンドレイの知らない娘に見える。  自分を見ているのか、それともルイを見ているのかは分からない。もしかしたら、全く違うところを見ている可能性もあるだろう。 『あの娘、何を見ていたのだ?』  アンドレイは多少気にはなったが、そのまま通り過ぎた。    それから半月が過ぎた頃のある日、アンドレイは所要で城の外を一人で歩いていた。  すると、道の脇に二人の人影が見えた。良く見ると一人はルイのようだ。 人目を避けるようにして話しているようだが、アンドレイには見えてしまった。 もう一人は女のように見える。以前、こちらを覗っていた侍女に似ているかもしれない。  あの女はいったい誰だ?ルイと何を話している? 妹かとも思ったが ルイに妹がいるとは聞いたことがない。  あれこれと考えると、段々とアンドレイの気持ちはモヤモヤしてくる。 この気持ちを突き詰めていくと、新たなことに気付いてしまった。 アンドレイはあの娘に嫉妬している。  翌日、時間が空いた時にアンドレイはルイにそれとなく聞いてみた。 「そなた、好いている娘はいるのか?」  するとルイは顔を赤くして目を丸くした。 「え、突然どうされたのですか?」 「す、少し気になっただけだ。どうなんだ?」 「そ、その様な娘などおりませぬ」   ルイはますます顔を赤くする。

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